月経困難症

 女性労働協会の調査によると、月経困難症は生殖年齢の女性の25%以上に認められ、若年女性ほどその頻度は高い。25歳未満では40%以上に認められるが、その多くは機能性月経困難症である(図1)。月経痛は、子宮内膜上皮が崩壊する際にその細胞膜から産生されるプロスタグランディンによって子宮が収縮し、これは月経血を子宮から排出させる合目的な作用ではあるが、子宮筋を貫く血管を攣縮させて子宮筋の低酸素状態を招くことから痛みが発生するといわれている。初経後2〜3年たって排卵周期になってからおきやすいとされる。しかし、思春期女子では、子宮が小さくその硬い頸管を月経血が流出する際の神経反射による痛みや、月経をネガティブにとらえることなどによって痛みが生じることもある。一方、若年女性にも器質性月経困難症があり、子宮奇形による月経血の流出障害や、クラミジア感染症の癒着などによるものなどもスクリーニングすべきであるが、機能性と思われていたものの中に子宮内膜症によるものがかなりの頻度を占めるとする研究報告も多い。また、機能性のものが将来子宮内膜症を発症する可能性が高いことも報告されており、子宮内膜症を念頭においた管理は重要である。

 治療としては、痛みに対する治療が主体であることから特に思春期では第一にNSAIDs投与することは多いが、鎮痛剤に抵抗性の場合や、子宮内膜症を疑う場合および子宮内膜症への進行が懸念される場合などには、これに加えて、或いは単独で、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)を投与する。LEPの種類と内訳は思春期女子-その他の月経周期異常の項を参照されたい。飲み忘れや飲み遅れのないように服薬指導するとともに、若年女性といえども、重大な合併症である血栓塞栓症の予防(脱水、不動、肥満、喫煙の排除)や自覚症状(表1:ACHESの有無)などに留意する指導を行う。近年、28日サイクルで消退出血を起こさずに、LEP(実薬)を連続投与する方法も保険適用となっており、学校生活や行事、日常生活の中に、消退出血の時期をフレキシブルに組み合わせることも可能となってきている。なお、はじめてのLEPの処方には、超低用量のエストラジオール20μg/錠ではなく、30-35μg/錠のものを周期投与した方が、服薬状況ですぐに不正出血が出る頻度は少なく、LEPを継続しやすいと著者は考えている。