【第3回】8.コミュニケーション

*各項目推奨のレベルは以下の通りです。

  1. 科学的根拠があり、行うよう強く勧められる。
  2. 科学的根拠があり、行うよう勧められる。
  3. 科学的根拠はないが、行うよう勧められる。

**本ゼミナールは、厚生労働省班研究2011-2012年「母親が望む安全で満足な妊娠出産に関する全国調査―科学的
根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラインの改訂-」(研究代表者:島田三恵子 大阪大学教授)に基
づいており、同研究班が発行した「科学的根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラン(金原出版株式会社
2013年)」を参考にしてください。

 我が国ではお産で不幸な結果になることが極めて稀になり、そのため、社会はお産が安全なのは当然と考え、少子化と相まって、少ない回数のお産を快適に、満足のいく形で経験したいという女性が増えています。一方、お産は正常だったものが急に異常になることがあり、医療者のコミュニケーションは、お産の快適性を高めるだけでなく、急変時の説明などにも大切です。そこで、妊婦健診時、分娩時のコミュニケーションと満足度との関係について調べました。妊婦健診時のコミュニケーションについてみると、顔を見て話す、何でも話しやすい雰囲気である、自分の心身の状態を理解できた、出産方針の説明があったということが妊娠中の満足度を上げ、その結果として健診後安心できたと感じた方は妊娠中だけでなく、全妊娠期間の満足度も高いことがわかりました(図15)。

         (図15)

驚くことに、出産方針の説明があり理解したと回答した方は82.4%、出産費用の説明があり理解したと回答とした方は76.5%にとどまっていました(図16)。

         (図16)

分娩時のコミュニケーションについてみると、異常があった方において、意思・希望を尊重してくれたと感じた方の満足度が高いことがわかりました。分娩異常が発生した際のコミュニケーションの重要性が示唆されました。また、気持ちを理解し、安心させてくれた、プライバシーに配慮された、自分が尊重されたと回答した方の満足度が高いこともわかりました。一方、浣腸された方、分娩経過の説明が理解できなかった、分娩経過の説明がなかったと回答した方の満足度は有意に低下していました(図17)。

         (図17)

10%以上の方が、分娩経過の説明がなかった、あるいは説明はあったが理解できなかったと回答していました(図18)。

         (図18)

この結果と、文献システマティックレビューから、以下のRQと推奨が得られました。

RQ6:妊産褥婦の立場にたったコミュニケーションをしているか?

推奨
 妊産褥婦の満足度を高めるためには、医療者は妊産婦を尊重し、妊産婦が安心できるような思いやりのある態度、個別性を配慮した態度で接する。妊産婦の顔をみて話し、質問がしやすい雰囲気を心がけ、出産の方針や健診・出産費用について説明する。妊娠、分娩の経過の説明を行う場合や、医療的処置、ケアについてのインフォームド・コンセントを行う場合は、専門用語を使用せずに、相手の理解を確認しながら行う。また処置やケアなど自己決定できる十分な情報を提供し、妊産婦が自己決定したことを支持するように配慮する。さらに、妊産褥婦のみならず、家族への説明、配慮をする。【B】            

 妊産婦・家族とコミュニケーションを行う場合、相手が返しやすい言葉や沈黙の保持を使用するとよい。医療従事者はコミュニケーションを常に意識し、さらにコミュニケーションスキルを高める努力、特にノンバーバルコミュニケーションの技術を磨くことが重要である。【C】

 分娩の結果が悪かった場合、母親・家族に状況を説明し、母親や家族が児と接触する機会を持てるように配慮する。医療者が母親・家族に説明を行う時は、専門用語を使っての説明や多くの情報を一度に話すことは避け、心情を配慮した場所で後日説明の機会を設けるなどの配慮が必要である。医療者は母親・家族に、寄り添う態度を示し、見守りながら、タイミングを見計らって、継続してコミュニケーションをとる。退院後に医療従事者と連絡がとれるように窓口を作ることが望ましい。【B】