12.スタートアップ12(ステップアップに向けて)

CTGマイスター(ベーシックコース)

スタートアップ12(積み残した課題とステップアップに向けて)

 スタートアップお疲れ様でした。基礎知識の復習は面倒なものですが、ステップアップに向け避けて通れない道です。
 今回は積み残した課題を示し、スタートアップコースとステップアップコースの意義を解説します。

1. 積み残した課題

1) 低酸素の原因、過強陣痛(図1、2)


 陣痛強度を定量的に評価する方法はない。NICHDのガイドラインでも、30分間の平均で、10分間に5回より多い子宮収縮を頻回収縮と呼び、注意を喚起しているが、過強陣痛(過剰収縮)の本質を評価したものではない。
 図1、2とも10分間に5回以上の子宮収縮があり頻回収縮だが、図1の陣痛発作持続時間は20秒で、図2では1分強と収縮の強さは異なる。頻回収縮でも、子宮収縮薬の使用の有無、一過性徐脈を伴っているか否かで、その対応は異なる。
 もし、これらに遭遇した場合、仮りに経過観察する場合でも、診療記録などに頻回収縮である旨記載を残し、経過観察とした理由を記しておくことが勧められる。

2) 胎児心拍数と基線細変動の関係(図3)

 胎児心拍数基線は自律神経機能が保たれる生理的な環境では、おおよそ110bpmから160bpmを推移し、妊娠週数の進行に伴い、心拍数は低下する傾向がある。非生理的な環境では低酸素状態、母体発熱・感染、薬物(鎮静・鎮痛薬、塩酸リトドリン、心臓薬など)、母体バイタル(ショック)などが心拍数基線に影響する。
 一方、胎児心拍数基線細変動は生理的な環境では、自律神経の協関作用により、基線細変動の振幅は6bpmから25 bpmの範囲を推移する。胎動、呼吸様運動、妊娠週数の進行が心拍基線細変動増加の要因になり、減少の要因には低酸素状態、胎児酸血症、胎児の睡眠中、母体への薬物投与(鎮静・鎮痛薬、麻酔薬、自律神経遮断薬、心臓薬など)、胎児頻脈などが心拍基線細変動減少の要因になる。
 疾患に伴う両者の変化はいずれ紹介するが、基本的な双方の関係を理解しておいていただきたい。基線細変動は心拍数基線が上昇すると減少し、心拍数基線が低下すると増加する言うことである。
 基線細変動は心拍と心拍の間隔で、図3上段では①と②の差、下段では③と④の差などから求められる。心拍数が増加すればするだけ、心拍と心拍の間隔の差は少なくなり、結果、記録される基線性変動は減少する。徐脈になれば、心拍と心拍の間隔の差は大きくなり、基線性変動は増加する。これこそ、基線細変動の判読が心拍数変動(一過性徐脈)の部分を除いて行わなければならない所以である。

2.スタートアップコース終了(図4)

 お疲れ様でした。ここでスタートアップ(1−12)終了です。
 ご覧いただく通り、もう皆さんの旅は死の谷(Valley of Death)を越え、後は知識が増していくばかりです(図4)。次回からは、知識やスキルをよりステップアップしていただける実践的なプログラムになります。
 それまで、このスタートアップを忘れずに、胎児の旅を見守っていただければと思います。