15.こんな時どうする?~周閉経期の子宮筋腫核出術〜

 これまで手術の話題について、実は避けていました。老眼になっても手術を続けていると、多くの手術に関する手技やコンセプトは「独自のこだわりを信じている」か「何の変哲もないことをしているので、こだわりが無い」と感じるかの2極化しているように思えますが、私は後者です。
しかし、前者は部下に一生懸命指導したり学会発表したりして他人の評価を受けていますが、後者は病識がないだけで、実際は「独りよがり」がほとんどといってもよいでしょう。

さて、その独りよがりの一端を披露するのが、今回のお題です。

 まず、産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020の関連CQ&Aでは、
有症状で挙児希望がなければ、原則子宮摘出術(推奨グレードB:UAEや筋腫核出術よりも症状改善度が高いエビデンスがある)、周閉経期だとGnRHアナログ(推奨グレードC)と記載されています。
あくまでエビデンスベースドであって、様々な状況での判断や価値観をある程度許容する玉虫色の内容になるのが、ガイドラインの特徴であり悪いことではありません。

 ところが、実際には患者さんだけでなく、施設や医師の考え方にもかなりバラつきがあって、「何度でもLM等の低侵襲手術を繰り返す」から「挙児希望のない子宮筋腫核出術はお断り」まで様々なのが現状です。
両極端な2方針を例示しましたが、各施設・医師の方針には十分な理由とメリット・デメリットがあると思われます。

 それでは、自分はどうしているのか?ということですが、
その前に、自分が頻繁に遭遇する患者さんの状況を説明します。
周閉経期で挙児希望がなくても、子宮温存手術を希望する患者さんは少なくありません。その理由が割と何となく曖昧である場合も多いです。

 どうしてそうなるかというと、多くの場合、40歳代後半位までは子宮筋腫を指摘されていても無症状もしくは、ホルモン療法等で我慢できていたのが、周閉経期になって無排卵周期、unopposed estrogenの状態が続くと、大量の性器出血や貧血の進行、子宮筋腫サイズの急激な増大が出現して不安になり、ようやく次のステップの治療を希望します。また、副作用、煩雑、長期、費用等の理由で薬物治療(内分泌療法)が合わなくても、このタイミングで子宮温存手術を希望してくるパターンが多いです。

また、子宮温存希望には、よく聞くと2通りあって、
①月経がこなくてもよいので、とにかく全摘だけはイヤだ
②月経は少しあってほしいが、後はこだわりなし
がほとんどなので、この2パターンについての「独自の対応」を説明します。

①の患者さんは少数で、「全く意味のない子宮温存希望!」と思われるかもしれませんが、GnRHアナログの副作用である卵巣欠落症状に悩まされた方が多い印象があります。「卵巣を温存すればいいだけじゃないか!」とも思われますが、子宮も卵巣も温存したいけど、GnRHアナログを使うのも嫌だという、注文の多い患者さんに限って、閉経してもHRTで苦労することも多いので、その場合には「子宮頸部だけ残しましょう」と言って腟上部切断術を提示します。
腟上部切断術の特徴(HRTでPを併用しなくてもよい、POP予防メリット、頸部疾患にかかるリスク)が理解できれば、筋腫の再発もなく低侵襲手術でも問題なく施行できる術式です。

②の患者さんに対しては、小切開開腹またはLAMで対応することが多いですが、簡単に言うと、「限りなく最小限の体部が残存する程度にした子宮温存」を行っています。
具体的には、体部を縦切開半割して筋腫核を全て摘出したら、最小限の内膜と筋層のみ残して、残りは腺筋症手術の如く体部を切除します。

 この術式に関して批判される点としては、「手術の基本として、良性腫瘍なら腫瘍境界部分を丁寧に剥離して摘出し、正常部分は必要以上に摘出しない原則」があります。
 確かにどのような縫合修復をしても、半年もすれば、表面平滑な子宮に戻りますが、術直後に鶏卵大程度の小さな子宮の方が血腫発生や再発リスクも少なく、阻血化で創外での操作と還納も容易な印象があります。

 子宮筋腫の外科的治療は、基幹病院規模であれば多くの施設で多数例行われていますが、「周閉経期」「子宮温存」というキーワードが組み合わさると、予想以上に医師・施設毎に対応が異なり、その情報について学会等をはじめとした表に出てこない現状があるのではないでしょうか?