18.ステップアップ6(有害な一過性徐脈の出現4)
低酸素状態は突然訪れることもある。何の前触れもなくである。こうした状況に求められるのはチーム力である。
1.突然訪れる低酸素状態
1)症例4(図1)
34歳、初産婦。妊娠37週、分娩第1期のCTGである。CTG直前の内診では子宮口は5cm開大で、胎胞が触知されていた。順調に経過していたが、↓印で妊婦は突然強い腹痛を訴えた。
想起される疾患あるいは状態と対応は?
2)突然変化するCTG(図2)
分娩中突発した強い腹痛と板状硬から、CTGに徐脈が出現しなくても診断はつきそうである。また、これだけの徐脈が出現すれば、疾患によらず急速遂娩を行うことに異論はないはずだ。求められるのはスピードである。
助産師は内診により、分娩の進行状況を確認している。所見から急速な経腟分娩は不可能で、帝王切開が選択される。この症例では、手術室へ移動し10分後(帝王切開決定から16分後)に、2826gの男児(pH7.08、アプガースコア1分6点、5分9点)が娩出された。
担当助産師は妊婦の異常な腹痛の出現に対し、内診を開始する前、他のスタッフ(助産師)に声をかけ(人員確保し)、医師や手術室への連絡を依頼している。極めて迅速に対応できた好事例である。
3)常位胎盤早期剥離(図3)
開腹所見で胎児娩出後の子宮壁にクーブレル徴候が確認される。娩出後の胎盤母体面に凝血塊が付着し、4-50%が剥離していた。
分娩中に急変するCTGの原因として、子宮破裂、常位胎盤早期剥離、臍帯脱出などがあげられる。この症例は、急性の経過をたどる典型的な常位胎盤早期剥離であった。いずれにしろスピードが求められる。
2.チームで対応基準を作る(図4、5)
こうした状況に求められるのはチーム力である。
著者の施設では緊急帝王切開にレベルを設けており、特に超緊急となる「グレードA」では医師、助産師、麻酔科医、新生児科医、手術室看護師などで年3−4回程度シミュレーションを行っている(図4)。
最近では、助産師はじめ手術室看護師や麻酔科医師が時間短縮に積極的で、ガウンやグローブなども含まれる簡易の手術セットが組まれ、連絡ルートも簡略化された。図5は少ない医師で効率的に作業を進められるよう、助産師、看護師に多くの業務を頼る形になっている。
参考にしていただければと思う。