20.ステップアップ8(胎児心拍数波形のレベル分類)

 低酸素状態に対する胎児の対応はや胎児機能不全の概念は、復習できたであろうか。CTGの判読はあくまで肉眼的(主観的)に行われる。ここでは胎児心拍数波形のレベル分類の位置付けと上手な使い方を紹介する。

 

1.胎児心拍数波形のレベル分類(抜粋)(図1)

 レベル分類は診断ツールではなく物差(モノサシ)である

 使い方は簡単だ。肉眼的(主観的)に判読した波形をこの表に当てはめ、レベルを割り出せば良い。正常脈、頻脈、徐脈によりスコアーは変化し、基線細変動の減少・消失はより強いインパクトを与える。

 この分類を診断と呼ぶ向きもあるが、それは正確ではない。診断(判断)はあくまで主観的に行うのである。そして、その結果をこのレベル分類という「モノサシ」に当てて表現するのである。

 

2.胎児心拍数波形のレベル分類に基づく対応と処置(図2)

 レベル分類で胎児機能不全と診断(判断)しても、「白以外」と言っているに過ぎず、薄いグレーから真っ黒まで、様々な状態が含まれる。そこで、この分類ではレベルに応じた対応を求めている。

 対応は施設機能に応じ、レベル毎に2段階(AとB)が設けられ、施設によっては、早めに準備や実際の対応をとるよう勧めている。これらは、産婦人科診療ガイドラインはじめ助産業務ガイドラインにも収載されており、それぞれの職種における指針になっている。レベルごとの対応を標準化することは、本邦の医療レベルの向上に寄与する

 

3.テロリズム介入対策(図3)

 分娩中の胎児の状態をすべて把握することができず、胎児のおかれた背景や分娩進行状況でリスクが異なる。これは、潜伏するテロリストの情報をすべて把握することができず、政情はじめ、イベント、曜日などでテロリズムのリスクは異なるという、テロリズムへの介入対策管理と似ている。

 もともと米国の医療安全管理の領域で、この考え方が導入されたと聞く。季節によりかわる感染症リスク等が、政情により移ろうテロリズムリスクに類似するそうだ。

 その概念が、胎児管理に応用されている。本邦の5段階レベルは、まさにこの米国国土安全保障省の介入対策に合致している。

 レベル3では、警察官(医師)投入、レベル4では、イベント(フリースタイル)中止、レベル5では、特殊部隊派遣(麻酔科医、新生児科医投入)である。