21.ステップアップ9(レベル分類の有用性)

 レベル分類を「モノサシ」と呼んだり、テロリズムへの介入対策に重ねたり解説すると、著者がレベル分類を否定的していると感じる方もいるかもしれないが、そうではない。再現性の向上、高い臨床的有用性、コミュニケーション能力の向上など、レベル分類を利用する価値は極めて高いのである。

1.再現性(図1)

 臨床検査は再現性が高くなければならない。再現性とは、科学実験などにおいて、所定の条件や手順の下で、同じ事象が繰り返し起こったり、観察されたりすることを指す。
 CTGのみならず全ての臨床検査にとって、検査者間と検査者内の再現性(異なる検査者が判読した場合の一致性と同一の検査者が一定期間を空けて2回判読した場合の一致性)を確保することは、重要な課題である。
 レベル分類の導入は、この難題を解決に近づけている。

2.レベル分類は再現性を向上させる(図2)

 重み付けカッパー(κ)係数は再現性の指標である。係数が1に近ければ近いほど再現性は高い。実際、0.6以上なければ臨床上使用できない。
 表は著者らが、主観的判断による分類とレベル分類による再現性を検討したものである。分娩直前の約100例のCTGを2名の検査者で判読し、その一致率を検討したものが、検査者内の再現性である。また、同一の検査者(ちなみに著者)が判読後、3ヶ月を経て再度判読したものが、検査者内の再現性である。
 主観的判断では、CTGを正常、要経過観察、要急速遂娩の3段階に分類しているが、検査者間の一致率が0.59と低く、臨床的に用いることができないレベルであった。これを胎児心拍数波形のレベル分類に置き換えると、表のように重み付けκ係数は0.7を上回り、再現性が確保される。
 主観的な波形判断は再現性が低く、レベル分類で表現すると再現性は向上することになる。
 これは、仮に波形の判読が不一致であっても、同様のレベルに収まる可能性があるためである。正常脈で基線細変動が正常であれば、高度変動一過性徐脈、軽度・高度遅発一過性徐脈、軽度遷延一過性徐脈はいずれもレベル3になる。対応が標準化されていれば、いずれと判読しても、結果は同じになるということである。

3.高い臨床的有用性(図3)

 左図は主観的判断による分類と実際の現場の対応を比較したもので、検査者は分娩結果を見ずにCTGを、正常、要経過観察、要急速遂娩の3段階に分類している。驚くことに、正常と判読したうち約25%は急速遂娩されており、急速遂娩が必要と判読したものでも約25%しか急速遂娩されていなかった。すなわち、判読者の解釈と現場の判断が全く一致していないのである。
 一方、右図は、同様のCTG判読をレベル分類にあてはめたものである。レベル1、2の症例で、急速遂娩されたものはなく、レベルの増加に伴い急速遂娩率は増加した。また、レベル4までに医療介入することで、臍帯動脈血pHは概ね保たれていた。
 したがって、レベル分類は主観的判断に比較し、再現性を向上させ、胎児の低酸素状態と密接に関連し、臨床的有用性も高い方法と言うことができる。

 「主観的判断は再現性が低く、臨床的な有用性も低い。レベル分類は、再現性を向上させ、臨床的有用性も高い。」ということだ。

 コミュニケーション能力向上に関しては、次回説明する。