25.こんな時どうする?~小学生の月経困難症

 最近は、中高生でもLEP製剤の処方も普及するようになりました、と前々回のコラムでも書かせていただきましたが、先生方は小学生の月経困難症にはどのように対応されていますでしょうか?都心部では、「2/1とか中学受験の試験日に合わせて何とかしてほしい」という相談が少なからずあります。

 言うまでもなく性器奇形等を除外してから、NSAIDsや漢方・ジエノゲスト0.5mg製剤を駆使すれば、多くのケースで普段の月経関連症状を軽減することは可能です。しかし、大事な受験日に月経関連症状に関してベストコンディションに近い状態にもっていくのは容易ではありません。

 それでは「成人女性で頻用するホルモン療法で対応すればいいじゃないか」と考える先生方もいらっしゃるかと思いますが、色々留意する点もあります。まず、ホルモン療法で用いられる薬剤のほとんどは小児に対する使用経験(エビデンス
)がない、と添付文書に記載されています。

 「一時的に月経を止めるだけならレルミナを服用させれば」と考える先生もいらっしゃるかもしれません。子宮内膜症による疼痛の改善の保険病名を付けてこども医療ということで、高薬価もクリアできるかもしれません。また、黄体ホルモンの副作用もなく中枢性思春期早発症に対してGnRHaの適応があることから一見問題なさそうにみえますが、受験直前のストレス下でエストロゲン低下による抑うつ症状が出現しやすい可能性がありますので、相応のリスクがあり一般的な選択肢とはいえません。

 一時的なLEPの服用や月経移動を考慮することも考えられます。嘔気等がクリアできれば、こちらの方が問題なさそうです。しかし、薬理作用上はエストロゲン補充による骨端線の閉鎖が早まることを否定できないのも事実で、一通りの説明は必要だと思います。すなわち、月経発来後にLEPを服用すること自体、小学生の低年齢でも経験的に問題なさそうであることは何となく知られていますが、どの年齢で、どの程度のエストロゲン暴露で、どの程度の身長の伸びが抑制されるかのエビデンスに乏しいということです。

 ちなみに、「ターナー症候群におけるエストロゲン補充療法ガイドライン」(日本承認内分泌学会薬事委員会)によると、以前はGH治療開始年齢が遅かったため、成人身長を高くするためにエストロゲン補充療法の開始年齢が遅い傾向にありましたが、12歳頃から少量(HRTよりも低用量)のエストロゲン療法を開始して、骨年齢を促進させずに思春期の成熟を図るようです。

2023年3月