25.ジャンプアップ1(宿題A-HARADAの波)
いよいよ、ジャンプアップ。アドバンスコースだ。ここでは様々な波形をご覧いただくが、見過ごしやすいものや誤読しやすいものなどの留意点からはじめたい。(個人的にはベーシックと合わせ48回まではがんばる予定である。AKBならぬCTG48だ。)
さて、CTG48劇場、後半のはじまりは宿題からである。
1. 宿題A(ステップアップ12参照)
この症例は図説CTGテキスト(メジカルビュー社)に掲載されたものである。
34歳、初産婦(1妊0産*連載中、基準が変わったので以後はこの表記)。妊娠40週、産徴にて受診し、外来で装着した40分間のCTGである。なお、子宮口はほぼ閉鎖した状態だ。
さて、何か問題はあるだろうか?
当院では院内助産の形態をとっており、これらの判読は助産師が行う。異常なしと判読した助産師が、帰宅を促そうとした時、H医師が通りかかった。H医師は、図1の2段目後半の波形が気になったようである。
2. 図1解説
弱い子宮収縮と少し遅れて基線再変動の増加が観察される。同部を心拍数の低下と判読すれば、子宮収縮に遅れており、軽度遅発一過性徐脈である(レベル3)。
いくらなんでもこれを遅発一過性徐脈と判読することには、抵抗がある読者も多いことと推察する。かつて、私もそうであった。
3.その後のCTG
引き続くCTGをご覧いただく。
波形は類似していないが、わずかな子宮収縮に同期し、繰り返し一過性徐脈が出現している。繰り返す遅発一過性徐脈である。したがって、図1の後半の不明確な変化は、これらの予兆であったのだ。
図3のCTGは基線細変動を減少としてもレベル3に止まる。こうした場合、contraction stress test(CST)を行うこともあるが、この不十分な子宮収縮に対して、すでに遅発一過性徐脈が出現していることで、CST陽性と同意義、すなわち経腟分娩困難と判断することもできる。
この症例では、初産婦で子宮口も閉鎖しており、インフォームドコンセント(IC)の結果、帝王切開分娩が選択され、3016gの健児(女児Ap9/9 pH 7.38)を得ている。
さて、図1の判読いかがであろう。著者の施設では「子宮収縮に遅れ、基線細変動が微妙に変化する波形」を発見者に因んで、「HARADAの波」と呼んでいる。もちろん正式名称ではない。
この症例の判読、納得いかない読者は次回を待たれたい。