30. 臍帯付着部異常(辺縁付着・卵膜付着・前置血管)

 正常な臍帯が胎盤実質に付着していない場合を臍帯付着部異常という。辺縁付着は、胎盤の辺縁に正常なワルトン膠質を有する臍帯が付着している場合で、卵膜付着は、臍帯が卵膜に付着し、ワルトン膠質を有さない脆弱な臍帯血管が卵膜上を走行する場合である。前置血管は、その脆弱な卵膜上を走行する臍帯血管が内子宮口上にある場合である。

卵膜付着は、卵膜血管が子宮収縮(陣痛)や胎児からの圧迫をうけ、臍帯血流の循環障害を起こし、胎児の低酸素などの異常と関連する(胎児機能不全)。卵膜血管は脆弱であるため、時には破水時に断裂することもある。

前置血管の分娩中の診断は極めて困難であるだけでなく、胎児先進部の圧迫や破水時の血管断裂のリスクが高い。しかし、超音波診断された前置血管は適切な管理でほとんど生児を得ることができるのに対し、診断されていない場合は効率に死亡や後遺症を残す結果となる。前置血管の児の予後改善のためには、超音波診断と陣痛発来や破水が起きる前の帝王切開が不可欠である。

 臍帯付着部の診断は、Bモードで子宮内腔を広くスキャンして、子宮の中での胎盤と臍帯の位置関係を把握し、胎盤実質の上に臍帯が付着している場所を描出できれば正常と判断できる。それが見当たらないときには臍帯付着部異常を疑い、胎盤の辺縁や子宮壁に付着する臍帯血管がないかを確認する。臍帯付着部が胎盤実質になく子宮壁に付着しているところを描出し、そこと胎盤実質の間を継ぐ遊走血管を描出することで卵膜付着を診断できる。子宮を少しゆすって子宮壁に沿う正常臍帯でないかどうかの鑑別をする。探すときはB-modeで、確認にカラードプラを用いるのがコツである。

胎盤のできあがった妊娠16週以降には卵膜付着を診断することができる。正しく診断された卵膜付着は分娩まで変わることはない。後壁の胎盤や、児が大きくなって隙間が少なくなると診断が難しいので、妊娠中期に診断しておく。

 卵膜付着や辺縁付着を見つけた場合、カラードプラや経腟超音波検査を用いて、子宮口近くに卵膜血管(前置血管)がないか確認する。内子宮口付近に遊走血管を描出した場合、前置血管と診断する。