36.見過ごせない皮膚疾患処方薬の進歩
2026年になり、四方山話ももうすぐ7年目を迎えます。自分の不勉強な部分を披露することで、これからも世の中の医療の進歩に少しでもついていきたいと思います。
さて、今回はセルフメディケーションとかOTC類似薬とかで世間を賑わせているなかで、皮膚疾患処方薬について取り上げたいと思います。
産婦人科医は皮膚疾患というと、外陰部の疼痛とか掻痒感とかで数種類の外用薬を処方しているだけのことがほとんどで、あまり最近の処方薬について興味がない先生も多いのでないでしょうか?
病院で勤務していると、併診する他診療科のカルテを見ていて勉強になることも多く、今回は尋常性痤瘡と帯状疱疹の処方薬について紹介します。
尋常性痤瘡
俗にいうところの「にきび」ですが、特に病院勤務の産婦人科医は、OC/LEP処方のついで相談されるとヨクイニン等の漢方を何となく処方して、それで軽快しないなら院内の皮膚科を紹介していることも多いかもしれません。
勤勉な先生方は「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」を読まれて、炎症性皮疹に対して抗菌剤治療を行い、2008年からアダパレン(ディフェリン®ゲル、ビタミンA誘導体)が、2016年からエピデュオ®ゲル(アダパレンと過酸化ベンゾイルの合剤、1日1回夜の洗顔後に塗布)が発売されていますので、これらを処方されているかと思います。
日本皮膚科学会編の本ガイドラインでは、OC/LEPや漢方のほとんどはC2(推奨しない)となっています。さまざまな診療科が処方する観点からは妥当なところでしょうか。一方で、エビデンスレベルを加味しても、妊娠に敏感な産婦人科医にとってテトラサイクリン系が内服抗菌剤の推奨度Aには実診療上の観点から少し抵抗があります。そうすると、若年女性に処方する場合には、推奨度Bのマクロライド系抗菌剤であるロキシスロマイシン(ルリッド®錠)が無難なところと感じます。
ちなみに多くの産婦人科医にとって関心が薄いですが、酒皶(しゅさ)とは、主に中高年の顔面に生じる原因不明の慢性炎症性疾患が定義のようです。
帯状疱疹
テレビコマーシャルで帯状疱疹ワクチンの宣伝がされていますので、産婦人科医は何となく知っている気分になっていると思います。性器ヘルペスではバラシクロビル(バルトレックス)500mg 1日2錠5日間処方されている先生方が多いと思いますが、帯状疱疹では用量と日数が違って、500mg錠を1日6錠で7日間内服となります。ファムシクロビル(ファムビル)の場合も単純疱疹の数倍の高用量を7日間内服することになります。
ところで、2017年からアメナメビル(アメナリーフ®錠)が発売されているのを産婦人科の先生方は御存じでしょうか? 帯状疱疹に対してアメナメビル(200mg) 2錠を1日1回内服、原則7日間投与で済みます。
また、性器ヘルペスの再発抑制には従来、バラシクロビル500mgを1日1錠内服が一般的でしたが、2023年からは、PIT(Patient Initiated Therapy)または「備える治療」として、性器ヘルペスを含む再発性の単純疱疹に対して、あらかじめアメナメビルを処方しておき、初期症状出現6時間以内にアメナメビル(200mg) 6錠を単回服用する治療が承認されています。
産婦人科周辺領域も知らない間に進歩していますので、日頃から新たな情報に敏感であると、患者さんからの突然の質問にも明快に返答できると思います。