4.スタートアップ4(一過性徐脈の種類と原因)
スタートアップ4(一過性徐脈の種類と原因)
一過性徐脈の種類と原因を理解し、判読することはCTGを評価するうえで、極めて重要である。なぜ、心拍数は減少するのか、もう一度原点に帰って復習していただきたい。一過性徐脈の定義を暗記していても、誤読を防ぐことはできないのだ。
1.一過性徐脈(deceleration)の種類と原因(図1)
CTGで分類される一過性徐脈は4種類で、様々な状態で出現するが、原因は低酸素と圧変化に集約される。判読に際して、この原因を推測することは重要だ。
2.急速=圧変化、緩やか=低酸素(図2)
日本産科婦人科学会、周産期委員会が定めた、一過性徐脈の定義を思い出していただきたい。波形は心拍数の減少が、急速か緩やかかにより分類するのである。圧変化(高血圧)に対する心拍数の減少は急速で、酸素分圧変化(低酸素)に対する心拍数の減少は緩やかになる。まさに、原因に基づき判読することを求めているのだ。
また、「肉眼的に区別する」とは、主観的に判読して良いということである。CTG判読の歴史的変遷を感じさせる一文である。かつて、再現性を向上させるため、導入された「30秒ルール」(後述)が、10年を経て改訂された形になる。ただし、30秒ルールがなくなったわけではない。「急速」か「緩やか」かは、主観的に判断し、判断に悩んだら30秒ルールを利用するということである。
3.30秒ルール(2003年)(図3)
1) 心拍数減少に要する時間を30秒で区切る。
2) 30秒未満は急速と判断し、変動一過性徐脈とする。
3) 30秒以上は、子宮収縮との関係をもとに、遅発一過性徐脈か早発一過性徐脈かを判断する。
これが「30秒ルール」だ。
一過性徐脈のうち、最も誤読が多く、誤読した場合に影響が大きいものは、遅発一過性徐脈と変動一過性徐脈の区分である。「30秒ルール」は、これら両者の区分を明確にするため導入されたものだ。
心拍数減少に要する時間を30秒で区切るもので、2003年日本産科婦人科学会周産期委員会が提唱した。検査者間と検査者内の再現性を向上しようとした試みではあるが、30秒に科学的根拠はなく、2013年、同委員会で上述の定義に改定された。
しかし、判断に悩むCTGを見たとき、「30秒ルール」は意外と便利である。自信が持てないとき、使ってみてはどうだろう。