7.スタートアップ7(軽度か、高度か、繰返すか)

スタートアップ7(軽度か、高度か、繰返すか)

 遅発一過性や変動一過性徐脈を判読したら、その程度を評価しておかなくてはならない。
 軽度か?高度か?繰返すか?により、しばしば、その対応が異なるためだ。

1. 軽度か、高度か(1)

1) 判読してください(図1)

A、Bを判読して下さい。波形は特徴的で難しくないと思う。
 いずれも30秒以上の経過で緩やかに心拍数が低下し、緩やかに回復している。言うまでもなく遅発一過性徐脈である。
 遅発一過性徐脈は高度と軽度に分類される。基線から最下点までの心拍数低下が15 bpm未満を軽度、15 bpm以上を高度と呼ぶ。
2) 遅発一過性頻脈(図2)

 左図(A)の心拍数基線はおよそ130 bpmで、一過性徐脈の最下点120 bpmとなる。したがって、約10 bpmの低下になり、軽度遅発一過性徐脈と判読される。
 右図(B)も心拍数基線は130 bpmだが、最下点は100 bpmで、約30 bpmの低下となり、高度遅発一過性徐脈と判読される。
 必ずしも高度のほうが軽度より状態が悪いと言うわけではないが、遅発一過性頻脈と判読した場合、引き続き軽度か高度かを判読しておかなければならない。

2. 軽度か、高度か(2)

1) 判読してください(図3)

 A、B、Cを判読して下さい。
 いずれも30秒未満の経過で急速に心拍数が低下している。言うまでもなく変動一過性徐脈である。変動一過性徐脈は軽度か高度に分類されるが、A、B、Cはそれぞれ、いずれか判読できるか?

2) 変動一過性徐脈(図4)

 変動一過性徐脈は、以下の2つの場合高度とされる。
   ・最下点が70 bpm未満で持続時間が30秒以上。
   ・最下点が70 bpm以上80 bpm未満で持続時間が60秒以上。
 また、最初のボトムを最下点として、判読することが、規定されている。
 (A)は120-125 bpm 程度までの心拍数低下と30秒程度の持続で、軽度と判読できる。
 (B)は65 bpm程度まで心拍数が低下し、40秒程度持続しているので、高度と判読できる。
 (C)は最初のボトムが75bpm程度の心拍数低下だが、110秒程度の持続時間があり、高度と判読できる。
 なお、(C)では、徐脈の後半60 bpmを下回る部分があるが、「最初のボトムを最下点として」判読するため、心拍数減少の持続時間が60秒以上あることから高度変動一過性徐脈と判読する。

3.繰返すか(連続的か断続的か)(図5)

 一過性徐脈が繰返すかどうかを、判読することは重要である。特に低酸素による遅発一過性徐脈では、直接、児の予後に影響する。ただし、本邦には繰返しに関する定義がない。
 一般に用いられるのは、米国NICHD(National Institute of Child Health and Human Development)のガイドラインの定義で、「任意の20分間に、子宮収縮の50%以上で一過性徐脈が出現する場合連続的(繰返す)とし、50%未満は断続的とする。」とされる(Macones GA. Obstet Gynecol. 2008; 112:661-666)。
 このガイドラインに基づき判読すると、図上段は20分間に8回ないしは7回の子宮収縮に5回の遅発一過性徐脈が出現し、50%以上を占め、繰り返し出現している。一方、図下段の遅発一過性徐脈は3回で、断続的と判読される。
 実際、繰り返す遅発一過性徐脈では、早急な対応が求められるが、単発のものでは経過観察が可能になる。