(3)便通異常症の鑑別
慢性的な便通異常には,女性ホルモンの関与や加齢による機能性のもの,糖尿病や甲状腺機能低下症のような内分泌疾患,膠原病,腫瘍,肛門病変,パーキンソン病のような神経疾患,うつ病のような精神疾患,薬剤の副作用によるものが挙げられる.また,腹痛を伴って,下痢や便秘を繰り返す過敏性腸症候群は,月経周期に関連して症状が変化することも知られる 5).妊娠中の便秘に関しては,主にプロゲステロンが介在する小腸や結腸の通過速度の低下が関与する 6).また,腸脳相関の観点から心身医学的側面にも配慮する 7).最も重要なことは,中高年の慢性的な便通障害では,治療に入る前に,悪性腫瘍の有無について鑑別をしておくことである.