日産婦医会報(平成22年4月号)

分娩料と分娩介助料について

医療対策委員会

 

 「分娩料」と「分娩介助料」の違いについては、医療保険必携のほか日本産婦人科医会報をはじめ商業誌等でも過去に何回か取り上げられているが、平成21年10月の出産育児一時金の直接支払い制度開始に伴い、分娩費用の内訳に関する妊婦の関心の高まりもあり、関係省部署への問い合わせが増えていると聞く。再確認の意味を含め「医療と医業」の項で取り上げる。

1 分娩料

 分娩料とは、正常分娩(分娩が全く療養の給付にならなかった場合)であった時の用語で、医師の技術料+分娩時の看護料を総称したものである。時間外加算ができることは言うまでもない。
 昨今、正常分娩においても分娩費用の内訳を示せとの声がある。分娩費用総額についてはある程度の内訳を示す必要があるが、自費診療においてそれ以上の細かな区分を設ける必要性はなく、分娩料そのものについてもさらなる内訳は示さなくてよい(平成20年医療保険必携P198の領収証のモデル参照)。その額は各医療機関がそれぞれの実情に即して決定してよいが、自費(自由)診療と言えども定額(定価)を定め、それぞれの基準をもって計算しなくてはならない。

2 分娩介助料

 分娩介助料とは、分娩時に異常が発生し、鉗子娩出術、吸引娩出術、帝王切開術等の産科手術およびこれに伴う処置等が行われ、入院、産科手術等が療養(保険)の給付になった場合の助産師による介助、その他の費用(自費)請求上の用語である。分娩介助料は自費分についての費用であり、保険給付分は含まれない。具体的には助産師らによる分娩前の母児の監視、新生児の顔面清拭、口腔・気管内の羊水吸引、臍帯処理、沐浴等、分娩後の母児監視の費用であり、さらに鉗子娩出術、吸引娩出術の際は会陰保護の費用も含まれる。
 分娩は母体と胎児・新生児の2つの生命を取り扱う医療であり、婦人科や他科の手術とは全く条件、内容が違うという考えに基づくものである。

3 分娩介助料が認められた経緯について

 分娩介助料は、昭和17年の、異常分娩でも助産の費用は請求してよいという厚労省通知に始まる。しかし、その後、分娩介助料は看護料に含まれるのではないかという解釈も一部に出ているが、正常分娩より異常分娩で保険を利用する方が出産費用が安いとなれば、患者が不要な医療の介入を求める可能性も起きてくる。したがって、これらの問題を避け得る料金設定が必要になる。

4 分娩介助料の設定について

 分娩介助料は上記に述べたように助産の手当てに関する自費料金であり、その設定は助産の手当てとして妥当な額を各医療機関が独自に決めるものである。しかしあまりに高額となると問題が生じる。日本産婦人科医会では、分娩介助料はその施設の正常分娩時の分娩料を上回らない額に設定するようお願いしている。なお、分娩介助料の時間外加算は、分娩料同様に設定可能であるが、日本産婦人科医会の統一基準では帝切時分娩介助料に関しては加算しないとしている(平成20年医療保険必携P193参照)。

5 おわりに

 分娩料と分娩介助料の違い、療養給付の対象になるもの、ならないものについて、会員の先生においては十分に理解され、また会計担当職員への周知を徹底し、患者に対してはその意義、内容をよく説明し、いささかも不信感を持たれぬよう留意し、特に領収証は保険分、自費分を明確に区別するようお願いしたい。
 医療保険必携は隔年に発行される。本年はその年に当たり、夏頃に発行の予定であるが、改訂前の平成20年版とともに熟読願いたい。

(文責 医療対策委員会統括委員長 小関聡)