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産婦人科有床診療所の方向性について
(日本産婦人科医会の考え方)



社団法人日本産婦人科医会
    会 長  坂  元 正 一


 有床診療所のあり方については、現在、厚生労働省や日本医師会・有床診療所検討委員会等において検討されているが、その中で、日本全国における全出生の46.6%(平成15年度)を担って いる産婦人科有床診療所の方向性が求められている。
 当医会では現在並びに将来の産婦人科医療を考慮しつつ、産婦人科有床診療所の方向性について、現時点における考え方をまとめた。



産婦人科有床診療所の方向性について

                           

A.類型化は今後の産婦人科医療の方向性として適当か

わが国においては、産婦人科有床診での分娩が47%を占めており、なおかつ病院産科の減少とは逆に出生率は少ないながら増加傾向にあるということは、産婦人科有床診が地域の方々、そして妊産婦の方々に信頼されている証であること・産科医不足が招来されてきていること・妊産婦が手近な医療施設での分娩ができなくなった地域が増えて来たなどの実態もあることなどから、産科類型の設定そのものには不確定な部分も多いとはいえ、産婦人科をひとつの標榜科として類型化することが適当ではないかという意見が多数を占めた。産婦人科診療所の地理的分布の多彩化は類型化による統合により有機的に統一診療化が容易となろう。

B.類型化が施行される場合、どのような条件であれば受け入れ可能か

  1. 一人有床診の分娩取扱いについて
    一人有床診を堅持する。
    医師一人の施設でも分娩取扱い可能であること及びその場合医療安全に対する十分な配慮がなされていることが最低条件となる。(この点他科と異なると考えられる)
     
  2. 48時間規制撤廃について
    産婦人科有床診では48時間規制撤廃を原則とする。
     
  3. 医療安全について
    診診・病診連携、有床診医療安全基準、24時間オンコール体制などの安全対策は、平成18年の医療法改正で最も重要な事項であり、医療の安全なくしては48時間規制撤廃や有床診における入院基本料の改正など、国民の理解は得られないと考えられる。分娩は医師の管理下で行うこと、地域における周産期医療システムの充実を図り診診連携や病診連携を積極的に推進すること、有床診医療安全評価票の活用、24時間オンコール体制整備など、安全対策の向上を図ることなどが必須要件とされるべきである。
     
  4. 婦人科疾患の入院取扱いについて
    産婦人科有床診とする。
    現在の産婦人科有床診は婦人科疾患を取り扱っている施設が多い。妊娠時に婦人科疾患を合併するケースも多く、産科と婦人科を切り離すことは困難と思われる。したがって、類型化する場合、産婦人科有床診とすべきである。特殊な限定診療のみの届出のある場合、設備の簡略化等に配慮されることが望ましい。
     
  5. 基準病床としての算定について
    算定しない。
    基準病床数に算定されることは、新規開業医師の地域医療への参入を妨げ、分娩取扱い施設の減少に拍車をかける可能性が強い。産科有床診の減少、産科医の老年化による周産期医療の危機的状況を考慮すると、基準病床としての算定を容認することはできない。
     
  6. 入院基本料の設定について
    施設基準に応じて設定する。
    高機能型有床診と産科(産婦人科)有床診の類型上の取り扱いなど、不確定な要因は多いが、他の類型との関連を尊重し、診療報酬上で差別化する。すなわち、産婦人科有床診夫々にも施設基準に応じた診療報酬の設定が必要となる。基幹病院に近いものは、ハイリスク分娩、一次的有床診には、ローリスク分娩が集中するからである。
     
  7. 産科(産婦人科)有床診の認可基準について
    許認可制でなく、届出制を堅持する。施設基準は法制化しない。

 

  この考え方は医会の関連する3委員会で合同検討し答申された案を常務理事会、理事会 (平成17年9月17日開催)で検討し、理事会において常務理事会に一任されたものである。
 なお、厚生労働省関連部局に説明するにあたって、あらかじめ日本医師会の了承を得た。