【第3回】9.医師・助産師の継続ケア

*各項目推奨のレベルは以下の通りです。

  1. 科学的根拠があり、行うよう強く勧められる。
  2. 科学的根拠があり、行うよう勧められる。
  3. 科学的根拠はないが、行うよう勧められる。

**本ゼミナールは、厚生労働省班研究2011-2012年「母親が望む安全で満足な妊娠出産に関する全国調査―科学的
根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラインの改訂-」(研究代表者:島田三恵子 大阪大学教授)に基
づいており、同研究班が発行した「科学的根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラン(金原出版株式会社
2013年)」を参考にしてください。

 患者にとって安心な医療のためには、患者と医療者との間に信頼関係が構築されていることが不可欠です。信頼をおける医療者が継続して患者を診察することにより、いつもの状態からの変化を早く検出してくれるだろうと患者は考え、また気軽に質問をすることも可能となり、安心感を持ちます。大学病院や病院に比べ、診療所や助産院でのお産の満足度が高い背景には、こうしたこともあると考えられます。そこで、医師・助産師の継続ケアと満足度との関係を調べました。その結果、同一医師による継続診療は、妊娠期、分娩期、産褥期のすべてで満足度を上昇させ、同一助産師による継続ケアは、妊娠期、産褥期の満足度を有意に上げることがわかりました。また、妊娠管理と分娩の施設が同一である場合、妊娠期の満足度が上がることがわかりました(図19)。

          (図19)

この結果と、文献システマティックレビューから、以下のRQと推奨が得られました。

RQ 医師や助産師の継続ケアを受けているか?

推奨
 同一の医師または助産師に継続的なケアを受けた女性は、妊娠から産後を通しての満足度が高く、再び同じケアを受けることを希望している。継続ケアを受けた女性では医療者とのコミュニケーションと意思疎通や説明への理解が高く、顔見知りの助産師にケアを受けた女性の方が自分で陣痛をコントロールできたと感じ出産体験への評価が高い。妊娠・分娩・産褥にわたる継続的ケアは分娩期の医療介入が減少し、反対に自然分娩やケアが多くなる。妊娠・分娩経過や新生児への臨床結果に影響のある根拠は認められず、継続ケアの有無による安全性に有意な差を示す根拠は認められなかった。このことから、医師や助産師の継続ケアは有益であると希望者には薦められる。【B】

 妊娠経過中いつでも、女性が医療ケアを受ける医療者を替えられるよう保証する。【C】

 単独の医療者による継続ケアが困難な場合、医師と助産師の協働チームによる継続ケアによって、母子ケアの満足度を上げる。【C】