13.カバーレターの書き方

殆どの雑誌が電子投稿となった現在でも、論文投稿時のカバーレターは極めて重要である。

1)雑誌の編集者に投稿の意図と何を明らかにしたのかを簡潔に知らせる。

2)この原稿が他のどこにも投稿していないこと、あるいは利益相反の有無を申告する。

という二つの意味がある。編集者は、この内容とアブストラクトそして本文を(ざっと)見て査読者に送るかどうかを決定するので、ここではねられると先に進めない。

もっとも大事なことは、当該論文が査読を進めてゆくのに十分な科学的内容であり、投稿先ジャーナルの読者に興味を持ってもらえるかどうかという点にある。前回述べたオープンアクセスジャーナルでない限り読者がお金を払って読んでくれるので読まれる価値がない場合優先順位は低い。良い論文であれば他の論文に引用されるので、投稿先のimpact factorを持ち上げる可能性がある。この点も考慮する必要がある。例えばPubmedで見る限り、過去半世紀に2例しかなかったと書くと、「じゃあ次も25年後だろう。従ってその間は引用されないから没」という反応になる。単に珍しいからというのではなくて その症例が病態解析に新たな可能性を開いたとか、従来のパラダイムでは説明できないので、新たな検討を必要とするという形で関連論文が出やすいことを強調する。

ただ、原著論文でも症例報告でもあまりにひどい原稿は査読者に送られず、immediate reject (門前払い)を受ける。一流雑誌ほどその割合は高い。

さらに、カバーレターはだいたい決まった書式があって、これを満たさない場合は英語力を含む投稿者のレベルがわかってしまうので、十分に注意する。

以下の点は特に確認のこと

  • 投稿先ジャーナルのフルスペル(昔、これを間違えて送ってきた方がいたが、もちろんすぐに没)
  • Editor in Chief あるいはジャーナル内で地域別、分野別にEditorが決まっていればその名前 
  • 当該論文のタイトルと区分(総説か原著か症例報告かレターか)
  • 研究内容の要点(新規性と重要性)を簡単に
  • この論文はいかなる言語でも未発表であり、現在も受けていない。
  • すべての共著者が論文の投稿に同意している
  • 倫理基準を満たしている(とくに臨床論文の場合)

査読者の推薦

多くの雑誌が投稿者の希望する査読者を考慮してくれるのでその名前と所属とe-mailアドレス,理由を書く。当該領域の第一人者であるとか、関連する先行論文の著者であるとかを記す。同じ施設や共同研究者はいれるべきではない。

希望しない査読者を聞いてくるジャーナルもあるが、特別な理由がなければあえて書く必要はない。(どうしても書きたい場合個人的に関係が悪くても、そうは書かずに研究内容でcompeteしているなどと書くが、あまり敵や競争相手が多いという印象は与えないほうがよい)

あたりまえではあるが、ビジネス文書なので、時候の挨拶とか日本語の「いつもおせわになっております」的な余計なことは書かない。ミススペルや初歩的な文法の誤りは編集者(多くの場合、当該領域の指導的な研究者)の非常に印象が悪くなるので、校閲ソフトを使用し時間とお金に余裕があれば、本文同様ネイティブチェックを受ける。

Dear Prof. Gil Mor

Editor in Chief, American Journal of Reproductive Immunology

I am writing to submit our manuscript entitled, “A novel natural killer cell population responsible for fetal allo tolerance in early human pregnancy” for consideration as an original article in American Journal of Reproductive Immunology.

We identified novel NK cell populations activated with trophoblast derived exsomes and revealed their nature in antigenic and epigenetic levels. We believe our findings highlight minor populations in human decidua and appeal to your readers for better understanding of human pregnancy.

Each of the authors confirms that this manuscript has not been previously published and is not currently under consideration by any other journal. Additionally, all of the authors have approved the contents of this paper and have agreed to your submission policies.

We suggest possible reviewers as follows.

  1. Prof Shigeru Saito (Toyama University) e-mail XXXXXX@YYY ;He is a leading scientist in this area.
  2. Dr. Jim Ito (City of Hope Medical Center) e-mail PPPP@ZZZ :He published articles regarding possible roles of uterine NK cells for local antiviral  infection control.

Sincerely,

Satoshi Hayakawa, M.D.Ph.D