【第2回】3.分娩施設の対応
*各項目推奨のレベルは以下の通りです。
**本ゼミナールは、厚生労働省班研究2011-2012年「母親が望む安全で満足な妊娠出産に関する全国調査―科学的 |
安心で安全なお産のためには、妊産婦が精神的に安定し、リラックスできる環境が必要です。日本では、現在、自宅分娩はほとんどなく、分娩場所は、大学病院、一般病院、診療所、助産院の4つに分類できます。
(図9)
図9は、全国調査において妊娠中から産後まで全体的に満足と答えた者の施設別頻度ですが、全体で87%の方が満足していると回答しており、満足と回答したものの割合が最も少なかった大学病院でも80%の方が満足していました。施設がどこであっても大半の方が満足しているとわかりました。
(図10)
施設ごとの差をロジスティック解析すると、大学を対照とした比較において、一般病院とは有意差がありませんでしたが、診療所、助産院の満足割合が、妊娠期、分娩期それぞれで有意に高いことがわかりました(図10)。施設選択の理由をみると、評判が良い、お産のやり方が気に入った、医療者の対応がよい、前回よかった、が、満足割合を上げ、他に産む施設がなかったは、満足割合を下げることがわかりました(図10)。全国調査の結果と、文献システマティックレビューから、以下のRQと推奨が得られました。
RQ 妊産婦の要望とリスクを考慮した分娩施設の対応は?
推奨
- 第1次分娩施設(診療所、助産院)では、安心させるコミュニケーション、同じ医師による継続的な診療、助産師による継続ケア、産痛緩和や分娩体位の工夫などのケアが多く、医療介入が少なく、妊娠期から産後のケアへの満足感が高い。妊産婦が要望と分娩施設の特性を活かした選択ができるよう、分娩施設は自施設の特徴を十分説明することが望ましい。【B】
- 第1次分娩施設の医療担当者はリスクを適切に判断して、高次医療機関へ紹介することが安全性と周産期医療全体の観点から薦められる。【B】
- 異常経過やリスクのある妊産婦は病院を選択する傾向があるが、安全性に充分配慮した上で、リスクがあっても工夫して、出来ることから努力して満足度を上げることが薦められる。高次医療機関において満足度の低い項目のうち、コミュニケーション(対応、経過説明、意思尊重、安心)、産痛緩和、助産師によるケアや分娩介助、母子同室、母乳育児指導、リスクによっては終始自由姿勢、夫や家族の立ち会い、早期母子接触・授乳などを再考することも必要である。【B】