35. 羊水過多
妊娠初期には、羊水は羊膜における母体血漿成分の浸透で生成され、妊娠中期から後期には胎児尿や肺からの分泌液が羊水の主成分となる。胎児尿は妊娠12週頃より産生が始まる。羊水量は妊娠34週まで徐々に増加し、その後は徐々に減少する。羊水は産生される一方、胎児の嚥下と胃腸から吸収もされる。そのin-outバランスで、羊水量はほぼ一定に保たれているが、妊娠後期には毎日約1000mlが入れ替わっている。羊水量の測定方法を以下に示す。
羊水ポケット (AP: Amniotic fluid pocket)
胎児付属物と胎児を含まない断面で、もっとも広い断面で、子宮壁に対し、垂直にプローベを当てて内部を羊水で満たす円の最大径を計測する。AP 2cm未満を羊水過少、8㎝以上を羊水過多とする。
羊水インデックス (AFI: Amniotic fluid index)
母体腹壁から子宮を四分割し、羊水腔の最大深度を測定し、4箇所で測定した合計をcmで表記したもの。AFI 5cm未満を羊水過少、25cm以上を羊水過多とする。
羊水最大深度 (MVP: Maximum vertical pocket)
子宮の矢状断面に平行に、また床に垂直にプローブをあて、その画面で子宮内壁から胎児部分もしくは子宮後壁までの最も深いところを測定したもの。MVPが2cm未満を羊水過少、8cmを超える場合を羊水過多とする。
羊水過多
羊水過多は、羊水の吸収が減るか、産生が増えることによって起きる。吸収が減少する病態として、食道閉鎖や十二指腸閉鎖などの上部消化管閉鎖(狭窄)などの先天異常、染色体異常などで機能的に嚥下ができない場合がある。また、上部消化管周囲から羊水の通過を妨げる口腔、頸部、肺などの腫瘍も原因となる。 一方、産生が増える病態は、母体の糖尿病、内分泌疾患、胎盤血管腫などはがある。無頭蓋症、髄膜瘤、腹壁破裂といった髄液や腹水の漏出が羊水過多となることもある。
しかし、羊水過多の半数は特発性で、自然に軽快したり、分娩後も原因が分からない。羊水過多に遭遇したら、胎児の精査を行い、早産の徴候に注意しながら経過観察する。羊水腔が広いので臍帯下垂や、破水時の臍帯脱出となることがある。