概論
・分娩前異常出血の原因としては,前置胎盤,常位胎盤早期剝離,前置血管などがある.
・分娩時異常出血は,分娩第1,2期にみられる出血と,分娩第3期とその直後から2時間までにみられる出血の2種類に大別される.前者は軟産道の裂傷,胎盤の部分的剝離による.後者には軟産道の裂傷,子宮収縮不全,胎盤遺残,血液凝固障害によるものなどがある.
計測された出血量は実際の出血より少ないこともあり,出血量のみで妊産褥婦の
分娩時異常出血を評価できない.したがって,分娩時異常出血は計測された出血量に加え,バイタルサインの異常(頻脈,低血圧,尿量低下,四肢冷感など)を考慮し,判断しなければならない.
・分娩後異常出血は,通常胎盤娩出後から児娩出24時間までの異常出血であるprimary PPHを指し,その後から12週間までを後期分娩後異常出血lat(e secondary) PPHと呼ぶ.
分娩後異常出血の原因としては,軟産道の裂傷,腟壁・外陰血腫,子宮収縮不全,子宮内反症,血液凝固障害,胎盤遺残,子宮仮性動脈瘤(UAP:uterine artery pseudoaneurysm)などがある.計測された出血量は,分娩時異常出血同様,実際の出血よりも少ないことも問題であり,出血量のみで判断できない.したがって,計測された出血量に加え,バイタルサインの異常も考慮し,判断しなければならない.
後期分娩後異常出血は,分娩後24時間以内の異常出血(primary PPH)と比べると,大量出血を来すものは少ない.原因として胎盤遺残,子宮仮性動脈瘤などが多い.安易に子宮内掻爬すると大出血する場合がある.その診断にはカラードプラ超音波とダイナミックCTが有用である.近年,分娩時異常出血,分娩後異常出血に 対して画像下治療Interventional Radiology(IVR)による治療が広まりつつある.