(1)はじめに

 中高年女性のヘルスケアは,女性の継続的就労支援が国策として挙げられているように,近年その重要性が高まっている.平均寿命が 50 歳未満であった頃の産婦人科領域においては存在しなかった概念が,長寿化により更年期もしくは閉経期以降の女性の健康問題として浮上し,高齢化社会になると健康寿命がクローズアップされ,男性と比較して女性の要介護期間の長さが問題視された.そして最近では,人口減少社会における女性就労者の健康問題から来る経済的損失が注目されているが,個々の中高年女性にとっても重要な課題である.

 しかし,中高年女性のヘルスケアと一口にいっても,単に更年期症候群を解説することとは異なり,実際の診療として扱う領域だけでも広汎多岐にわたり,診療や医療以外のすべてを網羅したり簡潔にまとめたりすることは難しい.中高年女性のヘルスケアが,女性医学,女性を対象とした各領域の医療,産婦人科医療と何がオーバーラップして何が違うのかが判然としないのが実情であるが,各疾患に対する専門的治療よりもプライマリケアや予防医学・医療に重点を置いているといえる.

 各論では,中高年女性が日常頻繁に遭遇する症状や疾患に対するケアや治療の実際について詳述されている.一方で,例えば産婦人科領域だけでも周閉経期の避妊や,ほかにもセルフメディケーション・フェムテック,肥満や整容(眼瞼下垂,皺など)に対する医療については紙面の都合上,割愛している.

 それでは,産婦人科医師である我々は,どのように向き合えばよいのか? 以下にそのヒントとなる事項を挙げてみる.