(1)概念

・子宮腺筋症は,子宮内膜類似の腺上皮および間質組織が子宮筋層内に発生する疾患と定義され,病変部位およびその周囲の子宮筋層が肥厚する.
・子宮全体にびまん性に病変が発生した場合には,子宮が著明に肥大することがある. 一方,子宮筋腫のように局所性に発生することも多く,adenomyoma と表現されるように,腫瘤性に一部の筋層が肥厚することもある.
・日本における子宮腺筋症の罹患率は5~70%(平均20~30%)とされる.
・エストロゲン依存的に発育する疾患であり,子宮腺筋症細胞にはエストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体が発現していることが報告されている.
・子宮腺筋症病変による子宮内膜の拡張・変形,子宮筋の線維化による子宮収縮のアンバランス化,病変腺管内の出血などが原因となって生じる子宮収縮の異常亢進などにより,月経過多,不正出血,月経困難などの症状や不妊や流早産が引き起こされることが想定される.
・子宮腺筋症の確定診断は,手術により摘出した標本の組織診断によってなされるが,近年MRI や経腟超音波検査の技術進歩により,ほぼ正確に外来診療で画像診断ができる状況になっている.
・このような背景で,30 代後半から40 代前半の妊娠を希望する女性が子宮腺筋症と診断される機会が増えており,対処に苦慮するケースが増加していると考えられる.
※子宮腺筋症の診断年齢・治療年齢はそれぞれ平均38 . 2 歳,38 . 7 歳
・子宮腺筋症患者の6~20%に子宮内膜症が合併し,64%に子宮筋腫を合併することから,診断の際には両者の合併の有無を見極め,治療の際に子宮内膜症および子宮筋腫に対する対応も合わせて総合的に検討する必要がある.
・以下の3 つが主な病因論として提唱されている.
 ①子宮内膜と筋層のバリア破綻によって子宮内膜が直接浸潤してできたという説である.経産回数やD&C の既往が腺筋症リスクの上昇と関連があるためである.
 ②子宮内膜症病変が子宮漿膜面から筋層内に浸潤してできたという説である.この機序で発症した病変は子宮内膜症の好発部位である子宮後壁に多いとされる.
 ③体腔上皮由来成分からの化生による発生という説があり,子宮筋層内に孤発性に存在するタイプが多いとされる.