(1)GSM の病態

  • GSM とは腟の慢性炎症と萎縮性変化により知覚過敏や機能低下を生じる病態で,隣接する尿道にも炎症が波及して下部尿路刺激症状(頻尿や排尿時違和感など)を現す.40 歳前後から GSM の発生は観測され,70 歳頃からは坐位での外陰部の疼痛や腟の拘縮なども散見されるようになる.粘膜固有の機能不全(老化,アレルギーなど),不潔になりやすい局所解剖,およびエストロゲン欠乏による粘膜の菲薄化が関与している.
  • 粘膜固有の機能不全:齢をとると細胞や器官の老化が起こり,皮膚と同様に粘膜の再生能力や防御能力は低下する.また,アトピー体質や粘液分泌能の不足など,体質的に粘膜のトラブルが起こりやすい人がいる.
  • 不潔になりやすい局所解剖:腟は外尿道口や肛門に近く,下着やパッドを身に着けた状態では排泄物中の微生物,活性成分,養分などが容易に腟前庭にも到達する.ヒトは立位で生活するため,加齢により垂れ下がった陰唇が腟前庭と外尿道口を囲いこむ配置をとり,個体によっては排尿時には流出する尿が周辺に付着した汚れ(垢,パルプ屑,体毛など)を巻き込んで腟内へ流入する.
  • エストロゲン欠乏:腟粘膜は閉経前後から劇的に新陳代謝が遅くなる.上皮層は菲薄化し修復や再生が鈍るため,微生物や白血球による炎症が固有層や平滑筋層にも及ぶ.結果として,腟壁の線維増生や拘縮が生じることもある.