(2)中高年女性の生理的変化
1 )ホルモンバランスの変化
中高年女性の生理的変化の中心は,エストロゲンとプロゲステロンといった性ホルモンの分泌低下である.エストロゲンとプロゲステロンの分泌低下は次のような影響を及ぼす.
- エストロゲンの低下
骨密度,血管弾性,皮膚の健康,認知機能,免疫機能に影響を及ぼす. - プロゲステロンの低下
無排卵周期が増加し,月経不順が生じる.また,閉経前の月経過多や子宮内膜過形成のリスクが高まる.
2 )身体的変化
- 体組成の変化
筋肉量の減少と脂肪量の増加が進行する.特に内臓脂肪の蓄積が顕著であり,基礎代謝の低下と相まって体重増加が生じやすくなる. - 骨密度の低下
骨代謝におけるエストロゲンの役割は重要であり,その低下は骨吸収の亢進と骨形成の低下を引き起こす. - 皮膚と粘膜の変化
コラーゲン合成が低下し,皮膚は乾燥し弾力を失う.また,腟粘膜や尿路上皮の萎縮が進行する.
3 )心理社会的変化
- 心理的負担
ホルモン変化に伴い,脳内のセロトニンやドーパミンといった神経伝達物質が変化し,抑うつや不安感が現れる.また,社会的な役割変化(子どもの独立,親の介護,退職など)が心理的ストレスを増大させる. - 社会的孤立感
配偶者の喪失や家庭環境の変化により孤立感を感じるケースが多く,心理的健康に影響を与える.