(2)常にアップデートされた様々な関連情報を得る
本領域においては,診療・診断のコツよりも,まずは常に医療者自身が概略でよいので様々な関連情報を幅広く入手し,正確な理解に努めることである.症状・疾患に関する各論については次項以降を参照されたい.
例えば,女性の継続的就労支援に関して「更年期と仕事に関する調査 2021」を NHK が行っている.そのデータを基に試算すると,更年期離職者数は,女性が 20.2~45.9 万人と男性(6.7~10.6 万人)の数倍多いとされており,正社員の割合は女性の方が 24.9%と男性(74.0%)よりも低率にもかかわらず,更年期離職による年間経済損失額は,1,848~4,196 億円と女性の方が男性(1,341~2,126 億円)よりも多いと推計されている(表1).
加えて,女性管理職推進の数値目標および情報公開などを義務付けた女性活躍推進法が 2016 年に施行されたが,2022 年4月の改正で対象が常時雇用 301 人以上の大企業から 101 人以上へと拡大された.そして経済産業省では女性の就業機会拡大支援としてフェムテック(Female と Technology をかけ合わせた造語で女性特有の健康課題をテクノロジーで解説するサービスや製品)関連に 2021 年頃より支援を開始し,2023年には 23 億円規模の補助事業を行っている.フェムテックは 2012 年頃より欧州を中心に提唱され始めたが,世界のフェムテック市場収益は 2023 年で 12 億ドル,2033年までに 50 億ドルに達するとされ,急速に拡大している.健康管理アプリやオンライン診療,IT,AI などのデジタル技術を駆使して,閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM:Genitourinary Syndrome of Menopause)領域だけでなく,月経,避妊,不妊,妊娠,更年期など,女性のライフステージすべてにおいて国内でもフェムテックが浸透しつつある.