(3)早期母子接触中の新生児急変

  • 新生児仮死などの異常を認めない新生児であっても,生後早期の新生児は胎児循環から新生児循環への適応過程にあり,予期せぬ急変(SUPC:Sudden UnexpectedPostnatal Collapse)が生じることがある.
  • 産科医療補償制度の対象となり 2016 年末までに原因分析委員会による分析が完了した 1,182 事例のうち,SUPC 後に重度脳性麻痺と診断された事例は 45 例,そのうちの 10 例は早期母子接触中の事例であった 3).母親が児の異変に気付いていたのは2例のみであった.事例の共通点は「初産」,「経腟分娩」,「パルスオキシメータ未装着」,「医療スタッフが付き添っていない」,「早期母子接触中の直接授乳」であった.
  • 初産の母親は,初めての授乳であるため,児の姿勢による気道閉塞のリスクを予知することが難しい.分娩時間が経産婦よりも長くなり,分娩後の疲労が強いことも関与する 3)
  • 麻酔薬よる母体の覚醒度の低下,肥満や BMI 高値,スマートフォンの使用による注意散漫,室内の薄暗い照度もリスクとなる 4)