(4)視覚スクリーニングの実際
1 )診察の準備
- ペンライト(眩しすぎないもの),遮閉板(手や親指で遮閉してもよい),直像鏡または検影器(レチノスコープ),適切な視標(乳幼児の興味を引くおもちゃなど)を用意する.
2 )診察の方法
- 乳幼児の機嫌をとり,自然な状態で以下の項目について診察する.
①新生児(~生後1か月)
- 問診票を確認する(表9).
- ペンライトを使用して瞳孔反応をみる.
- 外眼部・前眼部に眼疾患を疑うような異常所見がないか注意深く観察する(表 10).
- Red reflex 法(図 23).直像鏡(検影器)(図 23b)を使用して眼底からの反射(徹照)を瞳孔から観察する(図 23a).両眼から同じ大きさの黄橙色の明るい反射が観察できれば正常である(図 23c 上段).片方の反射が暗い場合には,強度の屈折異常が疑われる(図 23c 中段).片方の反射がない場合には,そちらの眼に白内障などの器質的疾患がある可能性が高い(図 23c 下段).左右眼いずれかでも正常な反射が観察できない場合は,早急に眼科精密検査が必要である.暗室で実施した方が瞳孔径は大きくなり観察しやすいが,半暗室や明室でも検査可能である.
②乳幼児(生後1か月~)
- 新生児と同じ.
- 新生児と同じ.
- 新生児と同じ.
- 新生児と同じ.
- ペンライトや視標を使用して固視と追視を観察する.片眼性の疾患はよい方の眼で見ているため異常に気が付きにくい.必ず片眼ずつ交互に遮閉板または手指で隠して,左右の視反応(固視,追視)に違いがないか観察することが重要である.
- 嫌悪反応や片眼のみの斜視がないか診察する(図 24).一眼を隠した時だけ嫌がるしぐさ(嫌悪反応)がみられる場合(図 24a)や,一眼だけが常に斜視で,斜視でない方の眼を遮閉すると,他眼では固視できずに視線が定まらない場合(図 24b)には,他眼に重症眼疾患がある可能性が高い.
- 眼位異常(斜視)の検出
眼位検査は乳幼児期を通じて重要なスクリーニング検査である.ペンライトを両眼にあてて角膜からの反射を観察する(図 25).左右眼ともに瞳孔の中心に反射光が観察されれば正位(顕性斜視なし),反射光が瞳孔中心からずれていれば内,外,上,下斜視が疑われる.次に,片眼ずつ遮閉して他眼の動きを観察する.他眼の位置ずれが起これば斜視と判定できる(遮閉試験). - 眼球運動検査
ペンライトや興味を引くおもちゃを使用して,左右,上下,斜めの9方向での両眼の眼球運動(むき運動)と輻湊を観察する.次に片眼ずつ遮閉して単眼の眼球運動(ひき運動)を観察し,眼球運動障害,眼振や異常眼球運動の有無をみる.
前述の診察で1つでも異常所見のある児は,早急に眼科での精密検査を勧める.
参考文献
- 1)公益社団法人日本眼科医会.園医のための眼科健診マニュアル.10-15(2019 年 10 月 20 日発行)(https://www.gankaikai.or.jp/school-health/20191015_eni_manual.pdf)
- 2)国立研究開発法人国立成育医療研究センター.乳幼児健康診査 身体診察マニュアル.9-10(2018年3月発行)(https://www.ncchd.go.jp/center/activity/kokoro_jigyo/manual.pdf)