1.本台風の被害状況

 2019年の台風15号災害では長時間の停電が千葉県の広範囲で発生した.このことから我々が学んだことは現代の生活は電気なしでは成り立たないということである.起こった事実とその対応から備えるべきことについて述べたい.

 本台風の被害は住宅被害 1,747棟,住宅以外の被害 818棟,がけ崩れ 60件,死者 1名, 負傷者 148名と大きな被害が生じた.この原因は,気圧傾度が 7~10hPa/10kmと大きかったことで記録的な強風が発生したためと考えられる.これらの強風による直接被害や倒木や建物倒壊,飛来物,土砂崩れなどの地盤影響などにより配電設備として電柱(約2,000本)・電線(約5,500経間)・変圧器(約430台)の損傷,最大の被害は 66kV鉄塔 2基倒壊などの送電被害が千葉エリアを中心に広範囲に発生したことで最大停電軒数約 934,900軒という大きな被害が生じた.さらにその停電復旧が早期に行われるという当初の予想が被害状況の把握に伴って想定以上に時間を要したために対応の遅れと日常生活に大きな影響が生じた.ライフラインには電力,ガス,水道,交通網・流通網などがあるが,今回は電力が喪失したわけだが,単純に電気が消える,テレビが見られない,ラジオが聴けない,エアコンが使えないだけでなく,現代社会において欠かすことのできない情報源であるスマートフォンの充電ができない,さらに長時間におよんだために携帯通信も基地局の非常用電源が枯渇したことにより,通信そのものが利用不可能となった.さらに,マンションなどではエレベーターが使えない,給水ポンプが使えないための断水,断水のためにトイレが使えない,洗濯ができない,食事が作れないといった様々な問題が生じた.蓄電池を有さないオール家電住宅では,料理,風呂,トイレといったすべての生活に支障を来すことになった.災害発生当日,さらに翌日は 30度を超える夏日であったことで熱中症の危険性が高まった.