1.災害時における分娩支援システム-物品-
自衛隊中央病院と防衛医大の共同研究として,大規模災害時のライフラインが途絶した状況での分娩介助を想定して,可搬式分娩装置を作成した(図28).参考にしたモデルは陸上自衛隊の保有する陸上自衛隊救急医療セット2であり,蘇生用品,人工呼吸用品,小外科手術用品などが入っており総重量10.4㎏の背囊状のセットであった.この装備品を分娩介助用に組み替え,手動式吸引カップ(ATOM 社製),ヘッドライト(ウェルチ・アレン社),携帯用ドップラー(ATOM 社),消毒薬,点滴セット,縫合器具,抗生剤,子宮収縮薬,シートなどを装備した.これらを1個の背囊に入れ,可搬式とした.総重量は約7㎏で体積は0.3m3,女性が背負っても運搬可能な大きさ, 形態とした.装備品の展開に約5分,模擬患者に対する分娩介助が整うまでに約10分を要した.どの備品もすぐに病院・クリニックの分娩室に備えておくことができるものばかりである.
大規模災害時には電気,ガス,水道などすべてのライフラインが途絶すると仮定し,さらに余震などで平常心を保つのも難しい状況で緊急処置をすることもあろう.紹介 した物品はもちろんのこと,各施設において必要と思われるものは可及的速やかに分娩室や病棟へ備えておくべきであり,日頃から使用にも慣れておくことも重要である.