2.ストレスホルモン
ストレス刺激によって体内に放出され,ストレス反応を引き起こすホルモンを総称してストレスホルモンと呼ぶ.ストレスホルモンは副腎皮質から分泌され,その血中濃度は hypothalamic-pituitary-adrena(l HPA)axisによって調整されている.代表的なストレスホルモンであるコルチゾールは,肝臓での糖の新生,脂肪の分解,タンパク質代謝,血糖上昇作用などの代謝作用を有し,また,抗炎症および免疫抑制などにも関与する生体にとって必須のホルモンである.一方で,過剰なストレスによって活動リズムが崩れるとコルチゾールの分泌が慢性的に増え,その結果,不眠症,うつ病などのメンタルへの影響や,生活習慣病などのストレス関連疾患につながると考えられている.
11β-hydroxysteroid dehydrogenase(11βHSD)はコルチゾールとその不( 弱)活性型であるコルチゾンの変換酵素であり,11βHSD 1はコルチゾンをコルチゾール(cortisol)に活性化し,11βHSD 2 はコルチゾールをコルチゾン(cortisone)に代謝することが知られている.産生されたコルチゾールは標的細胞のグルココルチコイド受容体(GR:glucocorticoid receptor)に結合し,その作用を発揮する.11βHSD は胎盤にも分布しており,合胞体性栄養膜に11βHSD 2が発現し,母体からのコルチゾールを代謝して不活化し,母体の高コルチゾール環境から胎児を保護する働きがある(図33).