2.災害時における分娩支援システム-機械-

 災害時における分娩支援システムとしての“機械”として,1つ紹介しておきたいものが「分娩監視装置iCTG」である.災害用に特化したものとして開発されたものではないが,遠隔医療への応用を目標とする機器であり,バッテリー式稼働のため災害時にも威力を発揮することが期待されるので触れておきたい.本機器はメロディ・インターナショナル株式会社(香川県高松市)が開発した胎児モニターであり,妊婦が家にいながら胎児心拍モニターと子宮収縮曲線をスマートフォンなどで遠隔医療機関へ転送することが可能である.母体へ装着する部分は超音波トランスデユーサと陣痛トランスデユーサの2個であり,付属のタブレットで操作し取得したデータをクラウドに送ることにより離れた場所からでも同時にデータをみることができる仕組みとなっている(図29).現在,日本産婦人科医会の遠隔医療プロジェクト委員会が行う検証研究には,埼玉医科大学病院を主幹研究機関として全国13の医療機関で参加し,「遠隔胎児心拍数陣痛図を用いた在宅リアルタイム胎児サポートシステム確立に向けた予備的研究」として遠隔医療,オンライン診療の確立,診療報酬算定化などを目指して実証研究がなされている.今現在,本邦でも猛威を振るっている新型コロナ感染症対策としても効果が期待され,新型コロナ感染妊婦の自宅待機の際のモニタリングや,社会的距離をとりたい時の定期モニタリングにも効力を発揮するであろう.また, 妊産婦救急搬送時のリアルタイム胎児モニタリングにも有用と考えられ,実証研究が 予定されている.ぜひとも多くの妊婦さんが使用できるようになり,いざという時, 病院・クリニックを受診せずに母体・胎児の状況が把握できるようになること,母児の異常を早期に診断し,早期の医療介入が可能となることを祈念する.