3.被災地で妊産婦を看る時の注意点
1.妊婦の状況把握と医療機関の情報収集に基づいた保険医療の中での連携
・妊産婦がどのような状況にいるのか情報収集することが重要である. 災害を引き起こした原因となるハザードの種類(地震,津波,洪水,土砂崩れなど)は何か.被災地はどのような地域にあるのか(都市か,地方か).災害サイクルのいつの時期なのか.これらの様々な情報を収集することで,想定できる課題への対応並びに予防が可能となる.
・妊産婦は,外傷がある,妊娠末期であるなど目立たない限り,どこに,どのような妊産婦がいるのかを把握することが難しい.避難所にいるのか,昼間は自宅の片づけをしているのか,仕事に行っているのか,避難所で子どもが泣くことに気兼ねするなどして他の滞在場所や被災地外に移動したのか,車中泊や指定外避難所にいるなどの可能性があり,一定の場所に集まっていない.
・妊産婦のかかりつけの病院や医院,助産院などの医療機関が被災している場合は,妊婦健診の受診や出産可能な医療機関を探す必要がでてくる.特に,分娩が近い妊婦やハイリスク妊娠の妊婦などには,早急な対応が必要である.
・このように,妊産婦の把握と対応可能な医療機関の状況を把握し,妊産婦と胎児・新生児の健康状態の維持や安全な分娩のために医療機関,看護管理者,自治体の保健師,助産師の職能団体や地域で活動している助産師,避難所管理者などと情報共有・調整し,具体的な活動にすることが必要である.
2.妊産婦への精神的なサポート
・妊産婦は,被災したことによるストレスや環境の変化などに加え,分娩や育児への不安,今後の生活への不安が高まるために精神的なサポートが必要である.
・妊産婦にかかわる際は,妊産婦の心に寄り添い,想いを表出する場合は,傾聴する.ストレスによる症状が強い場合,精神科医などの専門家や地域の保健師・助産師に 情報提供し,継続してかかわれるように調整することも重要である.