4.DMAT との連携の仕方
1 .医療搬送
災害急性期に連携が最も必要となる場面は,医療搬送が考えられる.災害時には医療資源が少ない中で搬送を実施せねばならず,数少ない搬送手段,搬送人員の調整で必ず連携が必要となる.DMATの多くが周産期医療従事者ではないため,周産期医療に関する知識を十分に持ち合わせてはいない.例えば,「そうはく(早剝)」「妊娠28週の妊婦」とだけ聞いても,これはどれくらい緊急度が高いのか,搬送先選定で何か特別に考えなければならないのか,なかなか伝わりづらい.できるだけ分かりやすい言葉で,緊急度,重症度も合わせて伝えることが重要である.また,「総合周産期母子医療センターに搬送を!」と伝えても,どこが総合周産期母子医療センターなのか把握していない可能性が高いため,可能であれば具体的な施設名を伝えた方がよい.
<医療搬送での連携時に最低限,伝えて欲しいこと>
・氏名,妊娠週数
・病名
・緊急度と重症度
・望ましい搬送手段:空路か陸路か
・搬送人員:産科医や助産師が付き添うべきかどうか
・搬送先:搬送候補となる施設名を伝える.周産期医療従事者で搬送先の選定まで行えるとなおよい
広域医療搬送が実施されるような大規模災害の際には,長距離,長時間搬送に耐えられるかどうかも伝える.広域医療搬送が望ましくない場合には,隣県への地域医療搬送が検討可能である.また広域医療搬送を実施する場合には,搬送中に注意すべき点,必要な資機材について伝える.
2 .物資支援,病院のライフラインに関する支援
災害時には病院機能を維持させるために,自家発電の燃料や医療ガスなどの補給,また給水といった病院のライフラインにかかわる支援が必要となる状況も起こり得る. 他にも,食糧やミルク,おむつ,分娩セットなどの物資支援が必要となることもある.このようなライフラインにかかわる支援や物資支援に関しては,DMATでも調整を行っている.支援が必要な場合には,院内災害対策本部を通じて,「病院として」支援要請を行う.SNSなどを通じて個人的な支援要請は避けるようにする.これらの支援に関しては,災害時小児周産期リエゾンに依頼することも可能である.支援要請を行う場合,大まかな必要量(必要数)についても必ず伝えるようにしてほしい.