33 .いつまで葉酸は続けるべきか?
ポイント
- 神経管閉鎖不全予防を目的とした葉酸は妊娠12週まで続けることが標準的である.
- 妊娠中期以降も葉酸を継続することで,貧血などを予防できる可能性がある.
妊娠前(可能なら受胎の少なくとも1~3カ月前)から妊娠1週まで毎日0.4㎎(400µg)の葉酸を補給することが強く推奨されている1).これは胎児の神経管閉鎖が妊娠4週から6週に完了するため,その期間に十分な葉酸を供給し神経管閉鎖不全(無脳症や二分脊椎など)の発生を予防するためである.一方で,妊娠13週以降は,神経管閉鎖不全予防という観点では葉酸の臨界期を過ぎている.しかし,葉酸は赤血球産生にも不可欠であり,妊娠中期~末期にも母体や胎盤・胎児の成長に伴い需要が高まるため,英国NHSでは,「妊娠12週を過ぎても葉酸を服用して構わない.葉酸は血液細胞の産生を助けるため,貧血がある人やリスクが高い人では妊娠を通じて継続するように助言してもよい」と述べている2).実際,葉酸は妊娠中期以降の1日の葉酸摂取推奨量は約480µg(付加量:240µg)であるが3),日本人若年女性における食事からの一般的な葉酸摂取量は200~300µg/日にとどまっている.さらに,一部の抗てんかん薬(フェニトインなど)使用中は,相互作用によって血中葉酸濃度が低下することにも留意する必要がある.葉酸欠乏は,免疫機能や消化管機能の異常,巨赤芽球貧血の原因となるだけでなく,胎盤血管内皮障害と関連した胎盤関連産科合併症(妊娠高血圧症候群,胎児発育不全など)との関連が示唆されている.一方で,高用量サプリメントの長期使用では児のインスリン分泌を抑制する可能性があり,また,児の喘息発症リスクを増加させることが観察研究で報告されているため3),過剰摂取にならないようにすることも重要である.このように,妊娠12週以降の葉酸補給について統一された公式勧告は存在せず,医療者によって助言がばらつくのが現状である.
なお,葉酸は産後の貧血予防や母乳の生成にとっても重要であり,授乳期間中の葉酸摂取推奨量は約340µg/日(付加量:100µg/日)とされている4).以上より,妊娠12週までは全妊婦に葉酸補給を強く推奨し,それ以降は貧血リスクや食事内容を考慮して継続を検討するという説明が現実的である.
文献
- 1)CDC. Recommendations for the Use of Folic Acid to Reduce the Number of Cases of Spina Bifida and Other Neural Tube Defects(https://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/00019479.htm)(最終アクセス日 2025年9月1日)
- 2)NHS. Pregnancy, breastfeeding and fertility while taking folic acid(https://www.nhs.uk/medicines/folic-acid/pregnancy-breastfeeding-and-fertility-while-taking-folic-acid)(最終アクセス日 2025年9月1日)
- 3)厚生労働省.「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会,日本人の食事摂取基準(2025年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書.2024(https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf)(最終アクセス日 2025年9月1日)
- 4)Yang F, et la. Relationship between maternal folic acid supplementation during pregnancy and risk of childhood asthma: Systematic review and dose-response meta-analysis. Front Pediatr. 10: 1000532, 2022