32 .妊娠中の飛行機による移動は安全か?

ポイント

  • 基礎疾患や妊娠合併症のない健康な妊婦では,妊娠中期を中心に飛行機搭乗は原則安全である.
  • 職業搭乗者(客室乗務員など)を含め,観察研究レベルでは搭乗自体で早産リスクが上昇するというエビデンスは乏しい.
  • 航空会社ごとに搭乗制限週数や診断書の提出要件などが細かく規定されているため,事前の確認が必要である.

    妊娠中の航空機搭乗は,基礎疾患や妊娠合併症のない正常妊娠であれば,母体・胎児ともに原則として有害ではないとされている.国際的なガイドライン1, 2)でも,妊娠中の航空旅行を明確に禁止する記載はない.国際航空運送協会(IATA)の指針3)では,単胎妊娠であれば妊娠36週まで,多胎妊娠では妊娠32週まで搭乗が可能とされている.ただし,航空会社ごとに搭乗制限週数や診断書の提出要件,診断書発行日などが細かく規定されているため,出発前に各社のウェブサイトや窓口での確認が必須である(表6).診断書には,正常妊娠であること,出産予定日,健康上搭乗に支障がないことなどが記載され,搭乗日を含む7日以内に発行されたものが求められることが多い.
    搭乗時期については,第1三半期は悪阻や流産リスク,第3三半期は早産や体動制限のリスクがあるため,妊娠16~27週の第2三半期が最も望ましいとされる.機内環境は一般に健康上問題ないとされるが,妊婦の場合は気圧や酸素分圧の変化,乾燥,長時間座位による静脈血栓症リスク,振動などに配慮が必要である.適度な水分摂取,足の運動,弾性ストッキングの使用,トイレに近い座席の確保などが勧められる.

航空会社別 妊婦の搭乗条件

文献

  • 1)ACOG Committee on Obstetric Practice: ACOG Committee Opinion No.443: Air Travel during pregnancy. Obstet Gynecol. 114: 954-955, 2009
  • 2)Royal College of Obstetricians & Gynaecologists. Air Travel and Pregnancy(Scientific Impact Paper No.1). 2013(https://www.rcog.org.uk/media/jw4jyghl/sip_1.pdf)(2025年8月3日閲覧)
  • 3)International Air Transport Association(IATA). Medical Manual, 12th Edition. 2020(https://go.updates.iata.org/MedicalManual)(2025年8月3日閲覧)