1.ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の診断や管理は?

1.ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の診断や管理は?

ポイント

  • HITはヘパリンの重篤な合併症であり,妊娠中・産褥期にも発症する1,2)
  • ヘパリン投与中に血小板数が30~50%以上減少,あるいは10万/µL未満となった場合はHITを疑い,まず4Tsスコア(表1)によりリスク評価を行う1,3)
  • 陽性または臨床的に高リスクと判断された場合は直ちにヘパリンを中止し,代替抗凝固薬に切り替える必要がある3,4)

    典型的な経過を辿るHIT(通常発症型)は,ヘパリン投与5~14日後に血小板減少や血栓症を生じる.『ヘパリン起因性血小板減少症の診断・治療ガイドライン』には,HITのスクリーニングとして,①すべての患者でヘパリン投与開始前に血小板数の測定を行うことを推奨する(1C),②過去100日以内にヘパリンの投与を受けたことのない患者では,ヘパリン投与開始後4~14日目まで,もしくは投与終了まで血小板数をモニターすることを推奨する(1C),③過去100日以内にヘパリンの投与を受けたことのある患者では,急速発症型HITを発症する可能性があるため,ヘパリン投与開始前と開始後24時間以内に血小板数測定を行うことを推奨する(1C)と記載されている([C]エビデンスの強さ:弱).
    『産婦人科診療ガイドライン産科編2023』では,解説中に,「ACCP(米国胸部疾患学会)のガイドラインでは妊産婦はHITのリスクが低い(<0.1%)とされ,ルーチンで血小板を測定しないことが推奨されている」と記載されている.しかし,これは,低分子ヘパリンを使用した場合に,1,167例の妊娠中に1例および2,777例の妊娠中では0例のHIT発症が確認されたというデータに基づいている.
    一方で,すべての妊産婦が同様に低リスクであるとは限らない.英国王立産婦人科医協会(RCOG:Royal College of Obstetricians and Gynaecologists)のガイドラインには,過去100日以内にヘパリン(未分画または低分子ヘパリン)を使用した既往がある患者では,治療開始後24時間の時点で血小板数を測定すべきであるとしている.
    HITの発生頻度は,内科系患者よりも外科系患者で高く,また未分画ヘパリン使用時により高頻度である.そのため,術後で未分画ヘパリンを投与されている産科患者では,投与4~14日の間,またはヘパリン投与が終了するまで,2~3日ごとに血小板数を測定することが推奨されている.

血小板減少を認めた場合は,以下のように対応する.

  • 【ヘパリン投与中または直近に投与歴あり】
           ↓
  • 血小板数の 30~50%以上の減少,または 10 万/µL 未満
  • 【Step 1】4Ts スコア(表1)で HIT リスク評価(最大8点)
     └─0~3点:低リスク→経過観察
     └─4点以上:中~高リスク→抗 PF4(血小板第4因子-ヘパリン複合体)抗体検査
           ↓
  • 【Step 2】抗 PF4 抗体検査の結果による対応
     └─陰性:HIT 否定→他原因検索
     └─陽性または高リスク:HIT と診断
           ↓
  • 【Step 3】ヘパリンを直ちに中止し,非ヘパリン系抗凝固薬へ切替
     └─妊娠中:ダナパロイド(現在供給停止)
     └─産後:アルガトロバン,フォンダパリヌクスなど

4Ts スコア

参考文献

  • 1)Linkins LA, et al. Treatment and prevention of heparin-induced thrombocytopenia: Antithrombotic Therapy and Prevention of Thrombosis, 9th ed: American College of Chest Physicians Evidence-Based Clinical Practice Guidelines. Chest. 141(2 Suppl): e495S-e530S, 2012
  • 2)Thrombosis and Embolism during Pregnancy and the Puerperium: Acute Management(Green-top Guideline No. 37b)https://www.rcog.org.uk/guidance/browse-all-guidance/green-top-guidelines/ (thrombosis-and-embolism-during-pregnancy-and-the-puerperium-acute-management-green-top-guideline-no 37b/)
  • 3)Warkentin TE, Greinacher A. Heparin-induced thrombocytopenia: recognition, treatment, and prevention: the Seventh ACCP Conference on Antithrombotic and Thrombolytic Therapy. Chest. 126: 311S-337S, 2004
  • 4)Greinacher A. CLINICAL PRACTICE. Heparin-Induced Thrombocytopenia. N Engl J Med. 373: 252-261, 2015
  • 5)ヘパリン起因性血小板減少症の診断・治療ガイドライン作成委員会.ヘパリン起因性血小板減少症の診断・治療ガイドライン.血栓止血誌.32:737-782,2021
  • 6)日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会.CQ004-1 妊娠中の静脈血栓塞栓症(VTE)の予防は?.産婦人科診療ガイドライン産科編 2023.8-12,2023