2.分娩後の VTE 予防における抗凝固療法の適応は?
ポイント
- 症例ごとのVTEリスクと出血リスクを評価し,抗凝固療法を実施するかどうかを決める.
- 帝王切開術後は,VTEリスクが相対的に高いため,出血リスクを踏まえつつ薬物的予防も含めて積極的に検討することが望ましい.
- 原則として『産婦人科診療ガイドライン産科編2023』の下記の記載1)に従う.1)VTE高リスク群に対して,「分娩後抗凝固療法」あるいは「分娩後抗凝固療法と間欠的空気圧迫法(IPC)との併用」を行う.2)VTE中間リスク群に対して,分娩後抗凝固療法あるいはIPCを行う.3)VTE低リスク群に対して,分娩後抗凝固療法あるいはIPCを検討する.
- 日本産婦人科医会の『母体安全への提言2020』2)では,「帝王切開術後は弾性ストッキング着用と間欠的空気圧迫法,術後1日までの離床だけでなく,積極的な抗凝固療法を実施する」と記載されており,中間リスク群,低リスク群であっても,抗凝固療法(例:手術終了6時間での未分画ヘパリン5,000単位,24時間以降でのエノキサパリンNa 2,000単位×1日2回を3~6日間)を積極的に実施することの重要性が示されている.
- 一方で,薬物による抗凝固療法は,VTE予防の面からは効果的であるものの出血や血腫の形成など副作用のリスクが増加する.そのため,症例ごとのVTEリスクと出血リスクを評価し,リスクとベネフィットのバランスを図ることが必要である.
- 『RCOG Green-top Guideline』はやや積極的なスタンスをとっており,産褥期のVTEリスクを評価し,出血リスクが小さい中間リスク群にも抗凝固療法(LMWHなど)を積極的に推奨している3).反対にACOGはどちらかというと保守的で,高リスク例に適応を絞り,出血とのバランスを重視するアプローチ法を採用している4).
- 早期離床,脱水の回避や改善,IPCなどと同時に抗凝固療法を行うことが肝要である.
- 出血リスクや施設の体制を総合的に評価し,VTE予防策を講じることが望ましい.
参考文献
- 1)日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会.CQ004-2 分娩後の静脈血栓塞栓症(VTE)の予防は?.産婦人科診療ガイドライン産科編 2023.13-17,2023
- 2)日本産婦人科医会.母体安全への提言 2020(https://x.gd/Trqns)
- 3)Royal College of Obstetricians and Gynaecologists. Reducing the risk of venous thromboembolism during pregnancy and the puerperium. Green-top Guideline No.37a. London, RCOG. 2022(https://www.rcog.org.uk/guidance/)
- 4)American College of Obstetricians and Gynecologists. Thromboembolism in pregnancy. Practice Bulletin No.196. Washington DC, ACOG. 2018(https://www.acog.org/clinical)