3.プレコンセプションケアの実際

ポイント

  • 臨床にかかわるすべての人がプレコンセプションケアを実践していくことが大 切である.
  • 多角的な視点でリスクを洗い出し適切に介入することがプレコンセプションケ アの第一歩となる.
  • 適切なプレコンセプションケアにより妊娠転帰を改善できるだけでなく,将来 の疾病予防にもつながる可能性がある.

   妊娠前の初診時には,包括的な評価が求められる.まず,生活習慣の確認として, バランスの取れた食事や適度な運動習慣があるかを評価し体重の適正化を促す.BMI が 25 以上の肥満は妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病,早産のリスクを,18.5 未満のやせ は低出生体重児や早産リスクを高めるため,また肥満・やせは不妊症にも関連するた め適正体重へのアプローチが推奨される 1).喫煙および受動喫煙は胎児発育遅延や流・ 早産,胎盤異常,乳児突然死症候群のリスクを高め,また男性の生殖能低下にも関連 するため本人およびパートナー双方に禁煙を促す 2).胎児の神経管閉鎖障害リスクを 低減するため妊娠の1カ月以上前から食事からの葉酸摂取に加えてサプリメントによ る合成葉酸 400µg / 日を摂取すること 3),またアルコールは胎盤を経由して直接胎児に影響を与えることから,妊娠の可能性があれば即中止が必要であることを伝える.
   感染症対策として,風疹,麻疹,水痘,B 型・C 型肝炎,梅毒,HIV,クラミジア 感染症の抗体価や既往歴をチェックし,必要に応じてワクチン接種や治療を行う 1). 特に風疹抗体価が低い場合は妊娠前のワクチン接種を推奨する.
   20 歳以上では子宮頸がん検診を,40 歳以上では乳がん検診を勧め,月経困難症な どの症状がある場合には婦人科受診を勧める.
   慢性疾患のスクリーニングも重要である.糖尿病や高血圧,甲状腺疾患,心疾患, 腎疾患の有無を確認し,妊娠前から適切にコントロールすることが重要である 4 , 5). 薬物治療をしている場合には,必要に応じて胎児にとってより安全な薬剤に変更し,また疾患コントロールに必要な薬剤がある場合には自己中断により疾患が悪化することのリスクを伝えることも重要である.
   そのほか,妊娠前にう歯の治療を勧め,また家族歴の聴取により遺伝性疾患のリス クを把握し必要に応じて遺伝カウンセリングを案内する.
   このように多角的な視点でリスクを洗い出し適切な介入を早期に開始することがプ レコンセプションケアの第一歩となる.

参考文献

  • 1)Johnson K, et al. Recommendations to improve preconception health and health care-United States. MMWR Recomm Rep. 55(RR- 6): 1 – 23 , 2006
  • 2)Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Smoking and infertility: a committee opinion. Fertil Steril. 110(4): 611 – 618 , 2018
  • 3)World Health Organization. Preconception care: Maximizing the gains for maternal and child health. WHO. 2013
  • 4)Wahabi HA, et al. Systematic review and meta-analysis of the effectiveness of pre-pregnancy care for women with diabetes for improving maternal and perinatal outcomes. PLoS One. 15 : e 0237571 , 2020 5)Bramham K, et al. Chronic hypertension and pregnancy outcomes: systematic review and meta-analysis. BMJ. 348 : g 2301 , 2014