12 .自然流産に対し待機的管理もしくは外科的治療となっているが,どちらを選択すべきか?

ポイント

  • いずれの治療方針も次回妊娠率に差はないと説明する.妊婦はどちらかを自身で意思決定し,医療者は選択された治療方針を支援する.
  • 待機的管理:手術回避の可能性/費用・侵襲が少ない一方,排出時期が読めず出血・疼痛で受診が増えることがある.
  • 外科的管理:予定が立てやすく遺残・予定外受診が少ない一方,手術侵襲・麻酔・出血/穿孔などのリスクがある.
  • (1)自然流産に関する用語・定義

        『産科婦人科用語集・用語解説集(改訂第5版)』によると1),妊娠12週未満の流産を早期流産(early abortion),12週以降22週未満の流産を後期流産(late abortion)と分類している.また,自然流産の中でも,流産の際に,胎芽あるいは胎児および付属物が完全に排出されず,一部が子宮内に残存し,出血などの症状が持続している状態を不全流産(incomplete abortion)といい,完全に排出された状態を全流産または完全流産と呼んでいる.胎芽あるいは胎児が子宮内で死亡後,症状なく子宮内に停滞している状態を稽留流産(missed abortion/miscarriage)という.稽留流産の中でも,超音波断層法にて子宮内に胎囊を認めるものの時間が経過しても胎芽・胎児像がみられない状態を枯死卵(blighted ovum)と呼んでいる.

  • (2)自然流産の診断

        『産婦人科診療ガイドライン産科編2023』では「CQ202 妊娠12週未満の流産診断時の注意点は?」に流産の取り扱いが詳細に記載されている2).診断に際して注意すべきことは,1回の超音波断層法による検査で確定診断をしないことである.超音波機器の性能の限界,膀胱の尿貯留,腸管ガスの貯留,排卵日の遅れなどから胎囊が確認できない,または最終月経から計算した妊娠週数と比較して胎囊が小さいことはあり得る.よって,1~2週間ほどあけて再検査を行い,診断の精度を確実にするとともに患者・家族への配慮を行う.生殖補助医療後の妊娠では,正所異所同時妊娠の可能性も念頭におく.

  • (3)自然流産診断後の対応

        わが国ではミフェプリストンとミソプリストールを妊娠12週未満の稽留流産・不全流産に使用することは標準的選択肢となっていないため,待機的管理か外科的治療のいずれかとなる.外科的治療を選択したとしても,手術予定日までに進行流産となり,子宮内容物が排出する可能性がある.どちらの選択をしたとしても,予期せぬ出血があることは説明しておかなければならない.待機的管理を選択しても,完全に子宮内容物が排出するとは限らず,不全流産の診断となって外科的治療を要する可能性についても知らせておくべきである.
        よって,必要時に外科的治療へ移行できるよう,術前検査を行っておくこともよい(術前検査は保険診療となる).術前検査の中に,血液型検査を含めるようにすると,RhD陰性を指摘することが可能となる.RhD陰性,RhD抗体陰性の妊婦に対しては,待機的管理であっても完全流産後の抗D免疫グロブリン投与が推奨される.

  • (4)待機的管理か外科的治療か

        外科的治療が選択可能となる12週未満の自然流産(早期流産)において,待機的管理もしくは外科的治療のいずれを選択するべきかは確立していないため,流産となった妊婦が複数の治療方針を自分自身で意思決定できることが重要である.
        わが国では認められていない薬物療法と合わせて3つの治療法について,Smithらが行ったMISTトライアル3)と呼ばれる無作為比較試験(妊娠13週未満)では,待機的管理と外科的治療で,予定外の入院が49% vs 8%,遺残が36% vs 10%,追加手術を要した例は44% vs 5%だった.2週間以内の感染症の発症率はどちらの治療法も約3%であり,次回妊娠率に差はなく,約80%が5年以内に生児を得られ,長期的予後という観点ではどちらの治療法も差はなかった.
        待機的管理は手術を回避できる可能性があるが,いつ排出されるか分からない,排出時の疼痛,出血があるという短所がある.
        外科的治療において,頸管拡張および子宮内容除去術(D&C:dilation and curettage)より吸引法(手動,電動)が推奨されているが,わが国における手動式真空吸引法(MVA:manual vacuum aspiration)のエビデンスが明確になるまでは,外科的手術のD&Cと吸引法,待機的管理のいずれも許容される.
        2回目以降の自然流産の場合,保険診療による流産絨毛染色体検査を実施することができるが(施設基準あり),外科的治療によって得られた検体が対象で,待機的管理で自然排出された検体は保険診療の対象にならないことに注意が必要である.
        どの治療法を選択しても,待機的管理であれば自然排出後,外科的治療であれば手術終了後に診察日を設定し,遺残の有無,病理学的検査の結果報告を行い,また妊婦の精神状態についても評価,支援することが望ましい.

文献

  • 1)日本産科婦人科学会.産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第5版.2025
  • 2)日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会.産婦人科診療ガイドライン産科編 2023.2023
  • 3)Smith LF, et al. Incidence of pregnancy after expectant, medical, or surgical management of spontaneous first trimester miscarriage: long term follow-up of miscarriage treatment(MIST)randomised controlled trial. BMJ. 339: b3827, 2009