14 .子宮収縮抑制剤に関して,硫酸マグネシウムと塩酸リトドリンの使い分けは?
ポイント
- 子宮収縮抑制剤に関しては長期的な有効性が証明され,安全性も保証されてい る薬剤はなく,硫酸マグネシウムと塩酸リトドリンに関しても同様である.
- 子宮収縮抑制剤の使用に際しては特に有害事象に注意する.
本邦では子宮収縮抑制剤に関して,硫酸マグネシウムと塩酸リトドリンの保険適用 が認められている.塩酸リトドリンを第一選択,硫酸マグネシウムを第二選択薬とし て用いられることが多いと考えられるが,その使い分けに関しては対象患者の特徴と それぞれの薬剤の副作用の特徴をもとに判断する.
現在までの様々な子宮収縮抑制剤の効果に関する報告をまとめると,子宮収縮の頻 度を減少させ,分娩時期を 48 時間から7日間延長するという作用は認められるものの, 新生児予後を改善するという明らかなエビデンスがないのが実情である.早産の原因 は感染をはじめ多岐にわたり,これらの原因に対する治療ではないことも理由と考え られている 1).
また,子宮収縮抑制剤には多くの副作用が認められるため,その使用にあたっては, 対象患者における薬剤投与の必要性と副作用の危険性を常に念頭に置いて診療にあた ることが大切である.
その効果と副作用を加味して,投与期間は,副腎皮質ステロイドの効果が表れるま での期間(24~48 時間),あるいは患者を安全に第三次医療機関に搬送するまでの時 間を確保する目的で短期間使用されることが多い.わが国では欧米と比較し,早期か らまた長期間使用されることが多いが,これらの投与法に対する信頼度の高い研究は 存在しないことにも留意が必要である.
塩酸リトドリンは本邦において最も使われている薬剤である.副作用としては頻脈, 振戦,動悸,高血糖,低カリウム血症,さらに重大な副作用としては顆粒球減少,肺 水腫,横紋筋融解症などがある.糖尿病や甲状腺機能亢進,心疾患のある妊婦での使 用は控える.
硫酸マグネシウムは,本邦では主に第二選択薬として切迫早産患者に用いられてき た.重大な副作用として呼吸抑制があり,投与中は呼吸状態の監視に努める.重症筋 無力症や,心ブロックの既往歴のある患者には使用禁忌である.腎機能障害のある場 合はマグネシウム濃度の急激な上昇に注意が必要である.また,5~7日以上の投与 は新生児の電解質異常や骨塩低下を来す可能性があり勧められていない 2).近年では,胎児の脳保護に硫酸マグネシウム母体投与が有効であるとの報告から,妊娠 32 週以 内の分娩直前での母体への投与が推奨されている3).
2022 年に発表された最新の meta-analysis によると,効果的に分娩を 48 時間以上 延長させたのは NO ドナー(ニトログリセリン),カルシムチャンネル阻害薬(ニフェ ジピン),オキシトシンレセプター阻害薬の順であったと報告されている 4).それ以 外にも,プロスタグランジン合成阻害薬(インドメタシン)も妊娠 32 週以前の症例に 48 時間に限って広く用いられている.また,研究レベルでは PGF2αレセプター阻害 薬の開発も報告されており 5),この分野のさらなる研究の進歩を待ちたい.
文献
- 1)Haas DM, et al. Obstet Gynecol. 113: 585, 2009
- 2)FDA drug safety communication(https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/fda-drug-safety_communication-fda-recommends-against-prolonged-use-magnesium-sulfate-stop-pre-term)(最終アクセス日 2025 年7月 10 日)
- 3)Jayaram PM, et al. J Perinat Med. 47: 262, 2019
- 4)Wilson A, et al. Cochrane Database Syst Rev. 8: CD014978, 2022
- 5)Bourguet CB, et al. J Med Chem. 54: 6085, 2011