15 .臨床的絨毛膜羊膜炎では分娩進行と感染増悪を予測して分娩誘発もしくは帝王切開を行うとされているが,具体的な方法は?

ポイント

  • 臨床的絨毛膜羊膜炎の診断後は速やかに分娩を進行させることが推奨される.
  • 経腟分娩(分娩誘発,分娩促進)が優先され,帝王切開は標準的な産科適応がある場合に限定される.
  • 新生児敗血症,呼吸障害,低Apgarスコア,分娩直後の蘇生の必要性,NICU入院率の上昇,神経学的後遺症などの新生児リスクが増加する.
  • 炎症性サイトカインや活性酸素の胎児脳への移行による神経細胞障害,胎盤炎症による局所的な血流障害などにより神経学的後遺症が増加する.
  • 経腟分娩中でも炎症性サイトカインによる児への影響があるため,分娩停止や胎児機能不全の場合は帝王切開を躊躇しない.

(1)臨床的絨毛膜羊膜炎と診断された場合の新生児リスク

    母体が臨床的絨毛膜羊膜炎と診断された場合,新生児敗血症,呼吸障害,低Apgarスコア,分娩直後の蘇生の必要性,NICU入院率の上昇,神経学的後遺症などの新生児リスクが増加するため注意が必要である1)
    臨床的絨毛膜羊膜炎で新生児の神経学的後遺症が増加するメカニズムとしては,炎症性サイトカインや活性酸素の胎児脳への移行による神経細胞障害,胎盤炎症による局所的な血流障害などが知られている2, 3).そのため,胎児心拍モニターの波形レベルが悪化しなくても児の脳障害のリスクは感染や炎症がない時に比べて増加することを理解することが大切である.
    早産児では脳の未熟性と炎症への脆弱性が高いため,炎症性サイトカインの影響がより重篤な脳障害や神経発達障害に直結しやすい.

(2)臨床的絨毛膜羊膜炎の診断

    臨床的絨毛膜羊膜炎は,母体発熱(38.0℃以上)に加えて,母体頻脈,胎児頻脈,子宮の圧痛,悪臭を伴う羊水または腟分泌物のうち2つ以上の所見を満たしたもので診断する(Lenckiの基準)(表2).しかし,この基準では真の羊水内感染の診断感度が低いため,臨床所見に加えてバイオマーカー,羊水検査など多角的な評価基準(triple I:intrauterine infection or inflammation or both)4)が用いられる(表3)

臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準(Lencki ら,1994)
Triple I の診断基準(Higgins ら,2016)

(3)臨床的絨毛膜羊膜炎の管理

    発熱に加えて母体または胎児の炎症所見を伴う場合(臨床的絨毛膜羊膜炎)には,速やかな分娩進行と広域抗菌薬投与が推奨される1, 5, 6)
    抗菌薬は第一選択としてアンピシリンとゲンタマイシンの静注投与が推奨されている1, 5)
    診断後には速やかに分娩を進めることが推奨されるが,原則は経腟分娩であり,分娩誘発もしくは分娩促進が第一選択である.帝王切開は胎児機能不全や分娩進行停止など産科的適応がある場合に行う1, 5-7)
    ただし,上述のとおり炎症性サイトカインや活性酸素などの胎児脳への影響があるため,胎児機能不全などのストレスにより通常よりも脳への影響が大きい.そのため,分娩進行停止や胎児機能不全の場合は速やかに分娩を終了する必要があるため,帝王切開を躊躇しない.また,分娩が長引く場合には母体の敗血症など重篤な感染症にも注意を払う必要がある.

参考文献

  • 1)Jung E, et al. Clinical chorioamnionitis at term: definition, pathogenesis, microbiology, diagnosis, and treatment. Am J Obstet Gynecol. 230(3S): S807-S840, 2024
  • 2)Jain VG, et al. Chorioamnionitis and neonatal outcomes. Pediatr Res. 91(2): 289-296, 2022
  • 3)Gomez R, et al. The fetal inflammatory response syndrome. Am J Obstet Gynecol. 179(1): 194-202, 1998
  • 4)Higgins RD, et al. Evaluation and Management of Women and Newborns With a Maternal Diagnosis of Chorioamnionitis: Summary of a Workshop. Obstet Gynecol. 127(3): 426-436, 2016
  • 5)Conde-Agudelo A, et al. Management of clinical chorioamnionitis: an evidence-based approach. Am J Obstet Gynecol. 223(6): 848-869, 2020
  • 6)Committee Opinion No.712: Intrapartum Management of Intraamniotic Infection. Obstet Gynecol. 130(2): e95-e101, 2017
  • 7)Venkatesh KK, et al. Association of chorioamnionitis and its duration with adverse maternal outcomes by mode of delivery: a cohort study. BJOG. 126(6): 719-727, 2019