17 .前置胎盤において胎盤を避けた子宮下節以外の切開は推奨されるか?
ポイント
- 前置胎盤での児の娩出法として,胎盤貫通法・Wardの手法・子宮体部や底部の切開が選択肢となる.
- 前置癒着胎盤の場合では,出血回避のため子宮体部や底部切開が選択され得る.
- 体部縦切開では次回妊娠で子宮破裂のリスクが高まる可能性がある.
前置胎盤で胎盤が子宮前壁を広く覆っている場合の児の娩出法として,①子宮下節横切開により胎盤を貫通して羊水腔へアプローチする方法,②子宮下節横切開の筋層切開部から用手的に卵膜を剝離・把持し,破膜して羊水腔に入る方法(Wardの手法)1), ③胎盤の損傷を回避すべく,高位切開(体部縦切開,体部高位横切開,子宮底部横切開など)する方法がある.③は胎盤の剝離や損傷を伴わずに児を娩出できるため,前置癒着胎盤が疑われる/合併する症例では,胎盤損傷部からの致命的出血を避ける目的で選択され得る.一方,③のうち体部縦切開では,次回妊娠・分娩における子宮破裂などの合併症リスクが高まることが大きな欠点となる2).子宮底部横切開についても,次回妊娠・分娩への影響は十分に確立していないが,子宮破裂に注意喚起を促す報告はある3).癒着胎盤を伴わない前置胎盤では,①②の手法を迅速に行うことで児を安全に娩出できる場合も多い.したがって,③を選択するメリットが必ずしも将来の産科合併症リスクを凌駕するとは限らないため,子宮切開法の選択には臨床状況に応じて慎重に判断する.
文献
- 1)Ward CR. Avoiding an incision through the anterior previa at cesarean delivery. Obstet Gynecol. 102(3): 552-554, 2003
- 2)Sangara RN, et al. Prior vertical uterine incision: Effect on subsequent pregnancy characteristics and outcomes. Int J Gynaecol Obstet. 160(1): 85-92, 2023
- 3)Fujiwara-Arikura S, et al. Re: Transverse uterine fundal incision for placenta praevia with accreta, involving the entire anterior uterine wall: a case series. Spontaneous uterine rupture during the subsequent pregnancy after transverse uterine fundal incision for placenta praevia with accreta. BJOG. 125(3): 389-390, 2018