19 .妊娠高血圧症候群の際の降圧剤の具体的な使用方法は?
ポイント
- 降圧開始:非重症域(sBP140㎜HgまたはdBP90㎜Hg以上)が反復して持続するようであれば降圧を考慮.重症域(sBP160㎜HgまたはdBP110㎜Hg以上)複数回なら速やかな降圧開始.
- 降圧目標:140/90㎜Hg未満(NICEでは135/85㎜Hg以下)
- 急激な降圧や過度な低血圧は胎盤循環低下を招くため避ける.
- 降圧剤の減量・中止考慮:dBP80㎜Hg未満が目安.
- 緊急降圧中は血圧モニター(15~30分ごと)と胎児心拍モニタリング.
- 重症域の場合の子癇予防:硫酸マグネシウム併用考慮(硫酸マグネシウム併用時は筋力低下や呼吸抑制に注意する.詳細は別項参照).
- ※利尿薬:降圧目的では使用しない.肺水腫などで考慮するが循環血液量減少に注意.
- ※レニン・アンギオテンシン系阻害剤:胎児毒性のため禁忌.
(1)内服薬
1剤で血圧調節不良の場合,機序の異なる2剤の併用.
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1)メチルドパ(脳幹部α受容体に作用する中枢性交感神経抑制薬)
- アルドメット® 1回250㎎,1日1~3回で開始,250~2,000㎎/日で維持:胎盤・胎児循環に影響少ない.肝機能障害に注意.
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2)Ca拮抗剤
- アダラート® CR錠 1回10~20㎎,1日1回で開始.最大量1回40㎎,1日2回で投与:血圧調節効果に優れる.過度な降圧に注意.血管拡張による頭痛,顔面潮紅,頻脈がある.
- アムロジピン®錠 1回2.5~5㎎,1日1回で開始,最大1回10㎎,1日1回で投与:最高血中濃度に達するまで6時間,半減期は36時間と長い.
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3)ラベタロール塩酸塩(αβ遮断性降圧剤)
- トランデート®錠 1回50~150㎎,1日3回で投与:喘息に禁忌.母体徐脈,胎児徐脈,新生児低血圧・徐脈に注意.
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4)ヒドララジン(血管拡張薬)
- アプレゾリン®錠 1回10~50㎎,1日3~4回で投与
(2)注射薬
重症域高血圧に使用.非重症域で子癇前駆症状がある際にも使用を考慮.
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1)ニカルジピン塩酸塩注射液(Ca拮抗剤)
- ペルジピン®(25㎎/25mL) 体重60㎏の妊婦,原液をシリンジポンプで使用の場合,0.5~1.0mL/時間で開始,15~30分ごとに0.5~1mL/時間増量,最大6mL/時間で静注(体重により増減).:降圧の迅速性と調整性に優れる.
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2)ヒドララジン(血管拡張薬)
- アプレゾリン®静注用(溶解して使用)20㎎+生理食塩水200mLを5~100mL/時間で点滴静注.:降圧効果はCa拮抗剤より低く調節性が悪い.頭蓋内出血の急性期には禁忌.
参考文献
- 1)日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会編.CQ309-1 妊婦健診において収縮期血圧≧140かつ/または拡張期血圧≧90㎜Hgや尿蛋白陽性(≧1+)を認めたら?.産婦人科診療ガイドライン産科編 2023.東京,杏林舎.176-180,2023
- 2)日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会編.CQ309-2 妊娠高血圧と診断されたら?.産婦人科診療ガイドライン産科編 2023.東京,杏林舎.181-184,2023
- 3)日本妊娠高血圧学会編.妊娠高血圧症候群の診療指針2021.妊娠前と妊娠中の降圧療法.東京,メジカルビュー社.145-150,2021
- 4)日本妊娠高血圧学会編.妊娠高血圧症候群の診療指針 2021.急性期における降圧療法の実際.東京,メジカルビュー社.151-157,2021