3.妊娠初期の随時血糖のカットオフ値は各施設が独自に設定とあるが,お勧めの基準は?
ポイント
- 随時血糖≧95㎎/dLの方が≧100㎎/dLよりもGDMに対する感度は高いが,追加検査が必要となり偽陽性も増える.
- 妊娠初期の糖代謝異常スクリーニングの主な目的はovert DMの早期発見であり,施設ごとにエビデンスと運用上の負担のバランスを考えてカットオフ値を決めるのがよい.
- 随時血糖≧100㎎/dLとHbA1c≧5.2%を組み合わせることも提案されている.
- 『産婦人科診療ガイドライン産科編2023』には,「妊娠初期の随時血糖測定のカットオフ値は95もしくは100㎎/dLなど各施設で独自に設定」とある1).
- わが国からの報告では,95㎎/dLをカットオフ値に用いた方が100㎎/dLをカットオフ値に用いるよりも有意にGDMと診断された妊婦が多かった2).すなわち感度は高いが,追加検査が必要となり偽陽性も増えることに注意が必要である.
- また,近年の大規模RCT3)では,妊娠20週未満にGDMを診断して治療しても,新生児複合転帰のわずかな改善(24.9% vs 30.5%,調整差−5.6%(95% CI−10.1~−1.2))を認めるのみだった.
- 以上より,妊娠初期の糖代謝異常スクリーニングの主な目的はGDMではなく,診断されずに妊娠した糖尿病(overt DM)の早期発見である,とする考え方も根強い.
- 随時血糖測定のカットオフ値を決める際には,施設ごとの特徴に鑑みて,エビデンスと運用上の負担のバランスを考えることが重要である.
- 妊娠8~13週の随時血糖≧100㎎/dLおよびHbA1c≧5.2%をカットオフ値に用いるとGDMの早期診断に役立つというわが国からの報告があり4),参考となる.
文献
- 1)日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会.CQ005-1 妊婦の糖代謝異常スクリーニングと診断のための検査は?.産婦人科診療ガイドライン産科編 2023.20-22,2023
- 2)Morikawa M, et al. Screening methods for gestational diabetes mellitus in Japan in 2018: a retrospective cohort study using a national surveillance questionnaire. Endocr J. 69: 1313-1322, 2022
- 3)Simmons D, et al. Treatment of Gestational Diabetes Mellitus Diagnosed Early in Pregnancy. N Engl J Med. 388: 2132-2144, 2023
- 4)Chigusa Y, et al. Role of random blood glucose and HbA1c levels in optimizing glucose tolerance screening in early pregnancy: a retrospective cohort study. Obstet Gynecol Sci. 68: 273-282, 2025