31 .HCV-RNA 陰性の HCV 感染既往母体から出生した児の対応は?

ポイント

  • 妊娠中にHCVウイルス量が変動することもある.
  • 妊娠末期〜分娩時点でHCV-RNAが陰性であれば母子感染は極めて起こりにくい.
  • 妊婦がHCV-RNA陰性の場合においても,児のHCV抗体検査を生後18カ月以降に行う.

    『産婦人科診療ガイドライン産科編 2023』では,HCV-RNA定量検査が陰性であれば母子感染の心配はないと説明することとされている1).ただし,妊娠中にウイルス量が変動することがあるので,妊娠末期に再検査することが望ましいとする報告もある1).また,妊婦のHCV-RNA検査が偽陰性である可能性も考慮し,母子感染を見逃さないために,『C型肝炎母子感染小児の診療ガイドライン 2020』2)では児の血液検査を推奨している.
    C型肝炎母子感染の診断については,①生後3~12カ月に3カ月以上あけて2回以上のHCV-RNA検査を行う2).HCV-RNA検査が2回以上陽性の場合を持続感染とし,陽性であったがその後持続的に陰性に転じた場合は一過性感染と考える2).②母がHCV-RNA陰性の場合も含め,生後18カ月以降にHCV抗体を検査する.それまでのHCV-RNA検査が陰性でかつ生後18カ月以降のHCV抗体も陰性であれば感染非成立と考える2).なお,loss to follow-up の対策として米疾病予防管理センター(CDC)は生後2~6カ月の HCV RNA による早期検査も選択肢としている3)
    母子感染例の約3割は3歳頃までに自然に HCV-RNA 定量検査が陰性化する2)ため,原則として3歳までは治療を行わない1).陽性児であっても,直接作用型抗ウイルス薬(DAA:direct acting antivirals)による治療を将来行うことで,体内からHCVを完全に除去することが期待できる4)
    以上より,HCV-RNA陰性妊婦から出生した児であっても,出生後のフォローアップが必要となり得る.最新のガイドラインに基づいた対応が必要であり,出生後には小児科医による管理を依頼することが重要である.

文献

  • 1)日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会.CQ607 妊娠中に HCV 抗体陽性が判明した場合は?.産婦人科診療ガイドライン産科編 2023.316-318,2023
  • 2)AMED 肝炎等克服実用化研究事業「小児期のウイルス性肝炎の病態解明と治療の標準化に関する研究」班.C 型肝炎母子感染小児の診療ガイドライン.Clinical Question4 C 型肝炎母子感染の診断にはいつ,どの検査を行うべきか?.日小児栄消肝会誌.34:110-112,2020
  • 3)Panagiotakopoulos L, et al. CDC Recommendations for Hepatitis C Testing Among Perinatally Exposed Infants and Children-United States, 2023. MMWR Recomm Rep. 72(4): 1-21, 2023 doi: 10.15585/mmwr.rr7204a1. PMID: 37906518, PMCID: PMC10683764
  • 4)日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会.C 型肝炎治療ガイドライン第 8.4 版.2025(https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/C_v8.4_202507.pdf