36 .胎児共存奇胎を疑った時の対応は?

ポイント

  • 胎児共存奇胎では妊娠中の合併症の頻度が高く,また侵入奇胎の続発率が高いことを説明した上で,妊娠の継続か中断かを検討する.
  • 部分胞状奇胎および間葉性異形成胎盤との鑑別は重要である.
  • (1)胎児共存奇胎の病態

    • 正常胎児と囊胞化絨毛を示す所見が同時にみられる場合に胎児共存奇胎を疑う.
    • 狭義の胎児共存奇胎とは,正常胎児と全胞状奇胎との双胎(CHMCF:complete hydatidiform mole coexistent with a fetus)を指す.頻度は1/22,000~1/100,000妊娠である.
  • (2)胎児共存奇胎の臨床像

    • CHMCFの場合,胎児染色体は正常であり,生児を得られる可能性はある.しかし全胞状奇胎を長期間子宮内にとどめることになり,出血,流早産,前期破水,妊娠高血圧症候群,胎児発育不全,子宮内胎児死亡など妊娠中の合併症のリスクが高い1)
    • CHMCF後に侵入奇胎などの絨毛性腫瘍が発症するリスクは報告により34~50%とされ,単胎の全胞状奇胎と比較してリスクがかなり高くなる1, 2).妊娠期間の長さと絨毛性腫瘍の続発率との関連性は認められない.
  • (3)胎児共存奇胎の診断

    • 超音波検査にてCHMCFは,正常胎児と正常胎盤像が存在し,臍帯が正常胎盤部に付着する.囊胞化胎盤部分は全胞状奇胎に特徴的な multivesicular pattern を示す.両者の境界は比較的明瞭である(図3)
    • 妊娠継続を希望する場合,羊水検査による胎児染色体分析を行い,正常2倍体であれば部分胞状奇胎を否定できる.必須の検査ではないが,鑑別診断を目的として患者の同意のもとに選択されることがある.
    • 診断の確定は胎盤娩出後(内容除去術後)の病理所見で行われる.正常胎盤(絨毛)部分と全胞状奇胎が境界を形成して存在し,免疫組織化学で正常絨毛部分はp57KIP2陽性,囊胞化絨毛部分はp57KIP2陰性である(表8)
    • 胎児共存奇胎の超音波検査所見 左:妊娠9週,右:妊娠 15 週
    • 胎児共存奇胎,部分胞状奇胎,間葉性異形成胎盤の鑑別
  • (4)胎児共存奇胎と鑑別を要する疾患

    • 鑑別診断として部分胞状奇胎と間葉性異形成胎盤(PMD:placental mesenchymal dysplasia)が挙げられる(表8参照).
    • 部分胞状奇胎の多くは三倍体であり,妊娠中期までに胎内死亡することが多い.超音波検査で正常胎盤と囊胞性胎盤の境界がはっきりしない.
    • PMDは超音波検査にて,幹絨毛血管の拡張を反映した囊胞化胎盤部分内の血管像が特徴的である.PMDは胎盤循環不全により子宮内発育不全や子宮内胎児死亡のリスクも比較的高いが,妊娠の継続が可能であり,生児を出産することも少なくない.
  • (5)患者への対応

    • CHMCFが疑われるが挙児希望の強い場合は,十分なインフォームドコンセントを踏まえて慎重に妊娠継続の可否を判断し,厳重な妊娠・分娩管理を行う.妊娠終了後は,全胞状奇胎の管理に準じて血中hCGを1~2週ごとに測定し,侵入奇胎が発生した場合は化学療法を行う.PMDが否定的で,妊娠継続希望のない場合は,妊娠のターミネーションを選択する.

文献

  • 1)Matsui H, et al. Hydatidiform mole coexistent with a twin live fetus: a national collaborative study in Japan. Hum Reprod. 15: 608-611, 2000
  • 2)Zilberman Sharon N, et al. Obstetric outcomes of twin pregnancies presenting with a complete hydatidiform mole and coexistent normal fetus: a systematic review and meta-analysis. BJOG. 127: 1450-1457, 2020