38 .帝王切開創部の菲薄化の管理は?
ポイント
- TOLA希望例では子宮下部筋層厚(LUST)を測定し,分娩様式を判断する.
- 産後に菲薄化を認めたらCSDi(帝王切開子宮瘢痕症)のリスクを説明する.
- 症状や不妊があれば,鏡視下(腹腔鏡または子宮鏡)手術で修復を検討する.
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(1)帝王切開創部の菲薄化と妊娠中の変化について
- 帝王切開既往のある妊婦では,妊婦健診時の超音波検査で子宮下部筋層厚(LUST: lower uterine segment thickness)の菲薄化を認めることがある(図4).ただし,菲薄化についての明確な診断基準はない.
- TOLAC基準に該当する2,588例を前向きに評価した報告では 1),妊娠週数が進むにつれLUSTは減少した(図5).帝王切開既往が1回のみに限定すると,第3三半期では平均2.81±0.78㎜であった(表9).



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(2)妊娠中に菲薄化を認めた場合
- 分娩様式の選択と,産後の帝王切開子宮瘢痕症(CSDi:Cesarean scar disorder)の発症リスクを考慮する(図6).
- TOLACの適応は施設により異なるため,前回の帝王切開が他院であれば診療情報提供を依頼し,手術適応や術中所見を確認する.また,LUSTはTOLAC判断の一要素に過ぎず,既往手術内容,分娩監視体制,緊急帝王切開対応能を含めた総合判断が必要である.
- 近年のPRISMA試験のサブ解析では 2),LUSTが2.5㎜以上あれば子宮破裂リスクは相対的に低いと報告されているが,絶対的な安全域を示すものではない. ・選択的帝王切開を選択する場合,帝王切開回数と子宮筋層の菲薄化は比例すること から,筋層菲薄化が進行してCSDiに至る可能性がある点にも留意が必要である.

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(3)産後健診で菲薄化を認めた場合
- 産後1カ月健診で菲薄化を認める場合があるが,過大評価や過小評価が起こり得るため,子宮復古や瘢痕成熟を考慮した実臨床上の目安として産後6カ月以降が望ましい.
- 産後6カ月以降にLUSTが5㎜未満であれば,月経終了後の褐色帯下,月経困難症,続発性不妊症などCSDi発症するリスクが高まるため,情報提供を行うことが重要である.
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(4)修復術
- 帝王切開創部菲薄化の修復に関する明確な適応基準はない.ただし,挙児希望症例で不妊治療が奏功しない場合や,CSD による症状が持続する場合には適応となる.既存の不妊治療についてもARTを先行させるか修復術を行うかはエビデンスがなく,患者との共有意思決定(SDM:Shared Decision Making)に基づき選択する.
- 修復術には腹腔鏡手術と子宮鏡手術があり,いずれも有効である.子宮鏡手術は低侵襲であるが,残存子宮筋層厚(RMT:residual myometrial thickness)が2.2㎜未満であれば奏功しにくいため,腹腔鏡手術が推奨される 3).
文献
- 1)Rao J, et al. Int J Gynaecol Obstet. 157(3): 710-718, 2022
- 2)Bujold E, et al. Am J Obstet Gynecol MFM. 6(12): 101543, 2024
- 3)Tsuji S, et al. Reprod Med Biol. 22(1): e12532, 2023