39 .経腟分娩後の尿閉の対応は?
ポイント
- 分娩進行中から定期的に排尿・導尿を行い,膀胱過伸展を防ぐ.
- 硬膜外麻酔例では尿道カテーテル留置を積極的に検討する.
- 分娩後は全例で排尿と残尿を確認し,必要に応じて導尿を行う.
- 退院後は骨盤底筋リハビリと3~4時間の排尿間隔を指導する.
- 産婦には「必ず改善する」と伝え,精神面に配慮して多職種で支援する.
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(1)産褥排尿障害(尿閉)とは
「経腟分娩後6時間以内,または帝王切開後に尿道カテーテルを抜去して6時間以内に自然排尿がない場合」と定義される.150mL以上の残尿も広義の尿閉に含まれる.自然軽快することが多いが,数カ月にわたり遷延する例もあり,QOL低下や膀胱破裂による死亡例の報告もある.
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(2)産褥排尿障害(尿閉)の原因
主な要因は①膀胱過伸展,②神経損傷であり,そのほかに局所の浮腫や疼痛,心理的因子も関与する.
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1)膀胱過伸展(Overdistension)
分娩中・直後の過度拡張により排尿筋収縮力が低下し,尿閉を助長する.介入しないと増悪して悪循環に至る.硬膜外麻酔では,膀胱の感覚神経が遮断されるため尿意が消失し膀胱過伸展のリスクが高まる(補液や産褥期の利尿により,想像以上に尿量過多となることにも留意する).
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2)神経損傷(Neuropathy)
分娩時の圧迫・牽引・伸展により,骨盤神経叢(特に陰部神経)が障害される.遷延分娩,器械分娩,巨大児分娩がリスク因子である.
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3)その他
会陰裂傷による局所の浮腫や疼痛,緊張,環境による心理的因子も影響し得る.
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(3)予防と対策
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1)分娩進行中
定期的な排尿,導尿を行う.硬膜外麻酔例では尿道カテーテル留置を積極的に検討する(筆者の施設では,硬膜外麻酔の間欠持続投与開始後に全例で尿道カテーテルを挿入している).
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2)分娩後(急性期:入院中)
分娩方法にかかわらず全例で排尿状況を確認し,残尿を超音波で評価する(図7).初回排尿時に尿意低下や残尿があれば排尿日誌(図8)を導入し,残尿が100mL未満になるまで3~4時間ごとに排尿・残尿測定を継続する.150mL以上では導尿を行う.改善しない場合は再度カテーテル留置で膀胱安静を保ち,それでも遷延する場合は間欠的自己導尿を積極的に導入することで早期の回復が期待できる(筆者らの施設ではおよそ2週間で自己導尿終了となっている).


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3)分娩後(亜急性期~慢性期:退院後)
骨盤底筋リハビリ※と排尿習慣指導を行い,膀胱機能回復を促す.日常生活では3~4時間(尿意がない場合は時間排尿)の排尿間隔を心がける.
※良い姿勢と自然な腹式呼吸で腹圧のコントロールを行い,産後の骨盤底筋や骨盤臓器の機能回復を促すリハビリ.
数日以上遷延する場合や自己導尿が困難な場合は,泌尿器科と連携することを検討する.また,全期間を通して,「産後の尿閉は時間とともに必ず良くなるので,不安になりすぎず,焦らないように」と伝え,産婦の精神面にも配慮し,多職種でサポートする.
参考文献
- 1)Yip SK, et al. Postpartum urinary retention. Acta Obstet Gynecol Scand. 83: 881-891, 2004 2)藤島淑子,三國和美.骨盤ケア,ペリネイタルケア.42(3):266-270,2023