5.BMI > 30 の妊婦に対する体重指導は個別指導になっているが,どのくらいの体重増加が望ましいか?
ポイント
- BMI > 30 群でも他群と同様に,体重増加量(GWG:gestational weight gain) が多いと LGA(large for gestational age),緊急帝王切開,妊娠高血圧症候群 および妊娠高血圧腎症が増加し,少ないと SGA(small for gestational age), 早産が増加する.
- 総合リスクが低い領域として BMI > 30 群は 40 週時点で GWG5㎏程度が示 されている.
- 個別に,胎児発育の推移をみながら,過度のストレスにならない範囲で栄養指導を行う.
- 日本では妊娠前BMI>30群(肥満2度以上)の妊娠中のGWGの目安は「個別対応(上限5㎏までが目安)」1)となっている.海外では5.0~9.1㎏になっている2).一般にアジア人はコーカシア人よりGWGが少ない3).
- 高度の肥満妊婦が日本より多い海外の報告は,人種の違いからそのまま日本人に当てはめることはできないが,傾向は参考になる.日本人はBMI>30群でも他群(やせ,普通,肥満1度)と同様に,GWGが多いとLGA,緊急帝王切開,妊娠高血圧症候群/妊娠高血圧腎症が増加1),少ないとSGA,早産が増加し1,4),海外と同様である.GWGが少ないと妊娠高血圧症候群と帝王切開は増加1)と不変4)の報告がある.
- 海外ではBMI>30の群でGWG≦0㎏の時LGA,巨大児,帝王切開のリスクは減ったがSGAリスクは増加した2).日本ではGWG≦0㎏の研究はない.GWG 5㎏までなら増大する胎児・付属物・羊水,子宮,血液増加量などの重量を考慮すると母体のみの体重はほぼ増えていないことになる.そこからさらに減量すべき根拠はない.
- “GWG増加によるLBW(low birth weight)減少の上限”はやせ群では13㎏,普通群では9㎏,BMI>30群では7㎏1)だった.早産もBMI>30群ではGWG 7~7.9㎏が最も低くなる1).
- 各リスクを重み付けして総合した結果1)では,BMI>30群はGWG 5㎏までが総合リスク最小であり,GWG 5㎏以上では増えるほど不良転帰が増す1).日本人の4群それぞれの妊娠経過中GWG推奨曲線(範囲)は文献3および5に示されている.この上限を超えない程度に,かつ緩やかな指導をするのが好ましい.
- 肥満1・肥満2群では妊娠初期のGWGは−2~−3㎏程度の減少があってよい3).中期(第2三分期)から増加に転じ,30週で+1.9㎏以下,40週で+5㎏が目安となる3).
- 個人によってはかなり厳しい条件となり得る.栄養指導が過度なストレスになることは好ましくない.
- 肥満妊婦では妊娠高血圧症候群,妊娠糖尿病の発症が多いので,個別に胎児発育の推移をみながら栄養指導を行うのが実際的と思われる.
文献
- 1)Takeda J, et al. Investigation of optimal weight gain during pregnancy: A retrospective analysis of the Japanese perinatal registry database. J Obstet Gynecol Res. 50: 403-423, 2024
- 2)Goldstein RF, et al. Association of Gestational Weight Gain With Maternal and Infant Outcomes: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA. 317: 2207-2225, 2017
- 3)Morisaki N, et al. Gestational Weight Gain Growth Charts Adapted to Japanese Pregnancies Using a Bayesian Approach in a Longitudinal Study: The Japan Environment and Children’s Study. J Epidemiol. 33: 217-226, 2023
- 4)Enomoto K, et al. Pregnancy Outcomes Based on Pre-Pregnancy BMI in Japanese Women. PLoS One. 11: e0157081, 2016
- 5)国立成育医療研究センター(https://www.ncchd.go.jp/scholar/research/section/socialmed/20210916.pdf)